なっこ

30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいのなっこのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

“フツー”に上書きされながら毎日を生きる

実写化は、生身の身体をもつ役者さんが演じてみせることで現実感が増す。BLの世界では男性が男性を想うことが許される世界だけれど、現実はまだハードルが高い。私たちの世界はまだ異性愛が当たり前の世界。だからこそひとつひとつ、その当たり前に違和感を感じていけるように画をつくっていくことが必要。そうすれば、当事者の人が見た時にほんの少し救いになる画になっていくのではないだろうか。ジャケットが並んで吊るされてたり台所に男性がふたりたってたり、連れ立って歩く二人連れがお揃いのパーカーを着て何気にペアルックだったり、私にとってはちょっと新しいな、ぐらいのことが、当たり前の多様性としてこれからもっと目に付くように描かれても良い気がしてる。彼らにとってはきっとそれが日常で同性愛を指向する若い世代にはこれもアリなんだ、っていう救いになるはずだから。自分の目指すべき愛のカタチに前例がなければどんな風に歩めばよいかわからなくなる。明るくてちょっと笑える、でも茶化さない、悩める当事者に真っ直ぐな愛情を示すこと、そういう器の大きさを感じた作品。誰の想いも否定したくない、そんな強さと優しさがある。

BL作品が女子に人気なのは、男性の性的魅力を、女としての自分は性的興味の対象にされない安全な位置から眺め愛でることができるからなんじゃないかなと考えていた。でもこのドラマは肌の露出が少なくてそういう演出を過剰にしなかったことがシンプルな恋愛ものとしてウケた理由なのかもしれない。そして画面に映るイケメン率が高いのも魅力。藤崎さんみたいに恋愛至上主義で生きていない人も多いはず、でもそういう人だって誰かの恋は応援したい、私もそんな気持ちで見守った作品だった。

同性を想う気持ち、
学生時代の夢を追うこと、
恋愛にどうしても気持ちが向かない、
外見で中身を見てもらえない、
フツーの範疇からはみ出してしまう人たちに向けて、フツーを生きてる人の前で押しつぶしてきたその気持ち、
ここにあなたのその気持ちを分かっている人がいますよ、とそっと手を挙げてくれているような。そんな優しさを感じる。

タイトルは、とてもキャッチー。女性経験や性体験の少ない男性を揶揄するように響いてしまうから、中身を見ずに敬遠されてしまいそう。でも、これでよかったと思う。30歳成人説とかもあって、本当の意味で社会に揉まれて人間的に大人になるのはハタチではなく30歳くらいだろう。自分自身のセクシュアリティに向き合うことができるのもいろんな経験を積んだこの年齢であるように思う。性的指向は変えることのできない方向性、他者と自分の心とに真剣に向き合う中でしか確認できない。黒沢の言うように“ゆっくりじっくり”他者とも自分とも向き合うべき、焦らずに。誰かの心に、肌に、本当に触れたいと思うまで、本当に触れて良いよと心から言ってもらえるまで。安達は黒沢の心の声を聞くことで他者との一歩踏み込んだ関係性を築けるようになった。内向的に見える彼自身の本当の良さは、主人公として彼を一緒に見てきた視聴者が一番よく知っている。彼は誰も否定しない。分かろうとする。受け入れようとする。自分にキャパがなくても。それによって成長しようとする、彼のそんな優しさが彼の良さであり本当の強さだと思う。ガツガツしない男子の良さをきっちり描き切って彼を本物のヒロインに推したところがこの物語の真に尊い点。真剣に生きてる誰かを優しく包んでくれるような、優しい物語だ。

※以下各話感想

#12
自分の心に触れること
迷ったときにちゃんと自分の本当の思いに気付かせてくれる周りの人って大切。藤崎さんと六角、アライのふたりの物語もきっと優しいものなんだろうな、彼らのこれからも幸せであってほしい。ラストカットは、欲を言えば黒沢にくいってしてほしかったな。でもあの自然に近づいてく感じがお互いに好き合ってることを表してるのかも。美しいショットでした。

#11
ハッピーエンドへ加速するための一波乱だとは分かっているけど、切ないすれ違い。安達のために色々準備してた部屋にひとり取り残された黒沢の背中…泣ける。黒沢の器の大きさはもとよりその優しさを利用したくない安達の優しさも好きだから、そりゃこうなるか。私も安達には笑ってて欲しいけどその隣には黒沢にいて欲しいよ。

#8
手を繋ぐシーンがとても良かった。ふたりとも指きれい。安達のデート服可愛かったな。

#7
ずっと泣いてた。もうなんか、心に触れらたって、こちらこそって言いたい。ハグのシーンがとても良かった。とりあえず来週までにもう一回見よう。幸せ過ぎる。

#6
「火傷するなよ」できゅんとして、
「お前のことが好きなんだ」で切なすぎて涙。この感情の振り幅にやられる。近づいたと思ったら離れようとする。伝えてしまったらもう近くにはいられないかもしれないのに。
でも、安達の“恋人”という表現は優しいね、普通なら多分“彼女”と言うだろうところだから。ひとつひとつちゃんと伝えようとする安達のあり方は、重くなんかないよ。

#4
藤崎さんの秘密を知ってしまったら彼女が一番気になるキャラクターになってしまった。恋や愛が一番ではない生活を覗いてみたい。スピンオフしてくれないかな。
黒沢の安達への想いに気がついている彼女が安達の幸せを願うように、私もこの物語の中で彼女が幸せであるように願う。

#3
あれ?ここで心の声聞きたいんですけど。っていう謎の思考回路になってしまう、モノローグに慣れすぎて。
六角に課長を送りに出させてたのも外の空気吸わせるためだったのかと気がつくと、安達と黒沢の気の遣い方って似てるのかもしれないと思う。

#2
このドキドキ感がずっと続くのだろうか。展開としてはそれ程進んでないのにまた1週間待つのかあ。でもそこが良いのかも。予告で小出しにされてまたどうなるんだろうって気になって、過ごす1週間。その繰り返し。もともとドラマってそんなもんだった、一気見しちゃうと薄れちゃうこの期待感も楽しむポイントなんだろうな。片想いは切ないね、黒沢。せっかく触れれば誰の心も読めるはずなのに、ほんと、安達に触れてくれる女子が周りに少ないってのも縁がないというか彼が紳士な証拠でもあるのかもな。

#1
見終わってからずっとニヤニヤが止まらない。
好きな人に対する妄想があんな風にダダ漏れしちゃってることがわかったらめっちゃ恥ずかしいだろうけど。
主人公の男の子ははじめモサっとしてるなぁって印象だったけど、思ってくれてる人の目に映るとセクシーで可愛くて甘々だった、これは惚れるね。町田くんはスーツがよく似合う、同じ職場にいたら私もきっとあのキャピキャピしてる女子たちの仲間入りしてるな、絶対。
1話30分は短いよ、続きが楽しみ。
なっこ

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