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グレイマンのymdのレビュー・感想・評価

グレイマン(2022年製作の映画)
3.5
キャプテンアメリカシリーズで一躍アメコミ映画界のトップランカーになったルッソ兄弟によるビッグバジェット・アクション映画。

ライアン・ゴズリングとルッソ兄弟の盟友とも言えるクリス・エヴァンス、そして今をときめくアナ・デ・マルマスも共演するというリッチな配役と、MCUやクレイグ版007にも引けを取らないような派手でパワフルなアクションシーンの数々だけでも十二分に見応えがあるNETFLIX配給大作である。

一見するとコンゲーム的な設計にも見えるプロットであるけれど、実態は至極ストレートでシンプルな追跡劇であり、画面に起こる現象をそのまま受容して楽しめる堂々たるエンターテイメント作品になっている。

87eleven顔負けの緊密でアイデアに富んだアクションシーンは見事であり、ライアン・ゴズリングの仕上がった肉体と相まって非常に痛快なシーンが満載だ。

肉弾戦はもちろん、ガンアクションやカーチェイス、大規模な爆破シーンなどアクション映画のクリシェを気を衒わずに引用しているのもジャンル映画としての満足度を高めることに腐心するが故のポイントとして非常に評価できるだろう。

一方であまりの王道路線のためにこの映画ならではの個性や無二性といった要素は希薄であり、常にどこか既視感が付き纏うのも事実。キャラクターの造形も各々に与えられた役割をこなすためのものに過ぎずに意外性のある展開に至らないのが物足りなく感じてしまう。

そんな中でもクリス・エヴァンスの小悪党っぷりをカリカチュアライズした猥雑な怪演は結構新鮮で面白みがあってなかなか良かった。

ルッソ兄弟もキャプテンアメリカでのお行儀の良いクリエヴァに飽きていたのか、彼のスマートなルックスの奥に潜む何かを感じ取ったのかは知らないけどかなり攻めたキャスティングには目を見張ってしまった。

まあクリエヴァは『ナイブズ・アウト』でも自身のパブリックイメージを逆手に取ったような人物を見事にこなしていたし、むしろこういう癖のある捻くれた配役にこそ魅力が出る役者なのかもしれないな。

全体的に大味でこれといった特徴がある作品ではないけれど、こういう大衆性のあるポップな映画も必要なわけで。気楽に楽しめるエンタメとしての機能性は充分高い良作。
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