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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3のymdのレビュー・感想・評価

4.8
大団円。
MCUの中でも独自の路線を邁進してきた人気シリーズ堂々の完結編にして最高傑作。

個人的にしっくりきていなかったフェーズ4以降のMCUだったけど、今作の突き抜けた素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。

本シリーズは1作目から「家族」(あるいはコミュニティの集合体)をテーマにした作品作りがなされていたけれど、この最終作でもそのテーマをしっかり踏襲しつつも、さらに踏み込んで「コミュニティの中に存在する個の在り方」についてまで言及することに成功している。

常にオフビートなギャグが繰り広げられるシュールな作風が特徴の同シリーズにおいて、ここまでシリアスかつ深淵なメッセージを内包させるというのは、映画全体のバランス感覚を保つうえで非常に難しい挑戦だったはずだけど、その試みを非常に高いレベルで昇華することができている。

これはジェームズ・ガンの作家性の根底に流れる人生観と密接に関わっているように思うし、だからこそ彼は一時MCUを離れてのDCEUにおいて『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』でもそれまでのアメコミ映画のスタイルを換骨奪胎させたような作りでその作家性を突き詰めていた。

そのうえで今作はジェームズ・ガンらしさが最も大胆に、かつ繊細に表出した正真正銘の最高傑作だと思うのだ。

あくまで装丁は楽しいSFコメディなんだけど、その奥にさまざまな社会問題を横たわらせている。
でも決してプロパガンダ的な偏向的主張に陥ることなく、その目線は常に市井と同じくしているのがとにかく素晴らしい。

エンターテイメントにおいての多様性の描き方としての最適解の一つは間違いなくここにあるし、それが可能になったのはこれまで培ってきたGotG全体の舞台設計とキャラクターたちの丁寧な描き方あってこそのものである。

プロットドリブンでもなければキャラクタードリブンでもないこの映画が、意図してかそうでないかは分からないけれど、極めて現代的で重厚なメッセージを獲得したことは今後のMCUの方向性に大きな影響を与えることになるだろう。

スタイリッシュなのに野暮ったい、宇宙なのにカラフル、SFなのにBGMがオールディーズ、コメディなのに切ない。

ジェームズ・ガンは映画の中で構成される要素において様々な矛盾を嬉々として描き出していたが、今作において彼は最後に「サヨナラだけど楽しい」という矛盾を観客に突き付ける。

なんというバカバカしくて粋なエンディングだろうか。

本当に素晴らしいヒーロー映画だった。
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