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ジョン・ウィック:コンセクエンスのymdのレビュー・感想・評価

4.5
副題通りこれまでの3作からの帰結を描いた堂々の第4作。

大好きなシリーズなので公開を心待ちにしていたのだけど、その期待を決して裏切らない「誰もが求めているジョン・ウィック」になっていて非常に楽しめた。

前作は殺し屋に追われる一方だったジョン・ウィックが、今作では遂にその死闘を終わらせるために戦いに身を投じていく様が鮮烈に描かれる。

このシリーズは映画におけるアクションの潮流に革命を起こしたと思うのだけど、この4作目はそのスタイルの最終到達点である。

169分という長尺の中に、膨大なアクション演出が詰め込まれており、凄すぎて笑いが抑えられなくなる。
ただ殺し合うだけのアクション映画でこの尺は異常事態だというのに、バラエティに富んだアクション、斬新なアングルワーク、魅力的なキャスティングが重なることで全く飽きることなく夢中になれる稀有な映画だ。

特に凱旋門の乱闘シーンのあまりの振り切りっぷりには映画館の中にいたのに思わず声を出して笑いそうになってしまうほどぶっ飛んでいて最高だった。

ジョン・ウィックのアクションはこれまでもさまざまなユーモアを含んだアイデアで観客を驚かせてきたけれど、いつだってジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)は沈痛な面持ちで凄惨な殺戮を繰り返しているというギャップがとても面白い。

今作も終始曇った表情で、大胆なスケールの戦闘を繰り広げているのだが、前作までは諦観的だったのが今作では自らの意志を明確に行動しているのが特徴的である。

その行動原理は彼が長年属してきた殺し屋組織からの解放を目的としたものであることはこれまでの3作でも繰り返し描かれてきたけれど、今作は不遜な計画を持って組織からの脱却を図る様子が描かれている。

前作で感じた敵役の火力不足も、今作では魅力的なキャラクターが多く登場するので常に画面が楽しいのもポイントだ。
特にキーパーソンとなる盲目の殺し屋ケイン(ドニー・イェン)と大阪コンチネンタルの支配人シマヅ(真田広之)のキャラ造形とアクションがとにかく素晴らしい。

キアヌも含め、最先端のアクション映画の骨組みを支えるこうしたキャストが全員60歳近い妙齢であるのも不思議だけど、だからこそ疲弊した時の身体の揺らぎや足取りの乱れなどがよりリアリティを促しているのかもしれない。

全4作が決して分離・矛盾することなく極めてフラットでシームレスに繋がったこのシリーズはまさに原題通り“チャプター”で仕切られているだけの壮大な1つの映画として観るのが正しいだろう。

そしてこのチャプター4は、ストーリーのクライマックスとして完璧に近い、見事な幕引きであるとぼくは断言したい。

今作以降もこのサーガは続いていくことは発表済みだけど、ジョン・ウィックの正史としてはここでピリオドを打ってほしいな。
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