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マリグナント 狂暴な悪夢のymdのレビュー・感想・評価

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)
4.6
これは怪作にして快作。
映画ってやっぱり楽しいものだよな、という原初的な悦びが全身を駆け巡る。

ジェームズ・ワンは押しも押されぬホラー映画界の重鎮だけれど、『アクアマン』や『ワイルド・スピード』などまったくの意ジャンルのブロックバスター映画も手掛けたりなど、常に革新と挑戦を行ってきた人物である。

今作はジェームズ・ワンが自ら原案を手掛け、監督も行っている。
大雑把に(あえて)ジャンル分けするならば今作はホラーに分類されるのだろうけど、そんな単純なラベリングに到底収まらないのがこの映画の魅力であり、無二の個性であるのは明白だ。

この映画はたしかにホラーとしてのジャンル映画の装丁を施しているが、サスペンス、スラッシャー、アクション、そして愛を主題にしたヒューマンドラマまで内包している。
この特異で奇妙なスタイルこそ、常に挑戦に身を置いてきたジェームズ・ワンの現在地であり、そしてそれはジャンル映画にとってのゲーム・チェンジャーとしてのポジションを獲得している。

ジャンプスケアやミスリードなどのホラー映画の古典的な技法をモダナイズし、スタイリッシュな演出に組み立てるセンスの良さと、予測不可能な展開が織り成すストーリーテリングは見事という他ない。

前半はオーソドックスなホラー映画のクリシェを着実に配置して観客の緊張感を高めていきながら、後半での大胆な転換によってその緊張感を快楽へと押し広げるそのカタルシスに鳥肌が立ってしまう。

ネタバレしてしまうと今作の面白さが半減してしまうので詳細についての言及は避けるけど、刺激を求めている人には絶対にオススメできる極上のエンターテインメントに仕上がっている。

そしてどこかB級映画の佇まいを残した抜けた空気感が残っている点もまた素晴らしい。
作品としての強度は間違いなくA級なのだけど、あえてクラシカルなオカルト臭を残しているような、ジェームズ・ワン自身のジャンル映画に対する偏愛的な嗜好が垣間見れるのは映画ファンとしてとても愛おしい。

本格的なホラー映画を求めて鑑賞するとちょっと違和感があるかもしれないけれど、斬新で強烈なインパクトを植え付ける新感覚ムービーとして楽しめるはず。

最高にサイコな娯楽映画として全力でオススメ。
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