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THE WITCH/魔女 —増殖—のymdのレビュー・感想・評価

THE WITCH/魔女 —増殖—(2022年製作の映画)
3.6
韓国映画史だけでなく、世界的にも強烈なインパクトを残した前作から5年経って公開された待望の2作目。

前作はクリフハンガーで閉じられていたので、その先を待ち焦がれたファンも多いだろうし自分もその一人なのだけど、この続編はその期待に十分に応えているとは言いづらい、なんとも微妙な仕上がりになっている。

本シリーズの最大の見どころはカオティックなサイキックアクションシーンに集約されているのは明白で、その点ではこの続編はその要素を前作を遥かに凌ぐボリュームと視覚アイデアで増幅させることには成功している。

前作はギアが入るのが物語後半からだったのに対し、この続編は最初からフルスロットルでアクセルを踏み抜いており、最初から最後まで圧巻の戦闘描写が展開されている。
その気合いの入りようはMCUやDCEUなどのアメコミ映画を凌駕するほどで、前作の主人公ジャウン(キム・ダミ)の殺陣に魅了された観客は間違いなく満足度の高い体験となるはずである。

今作の主人公となる少女(シン・シア)はジャウンとは全く異なったキャラ造形になっていて、その無邪気で野生的なキャラクターは見ていてとても楽しかったし、周りを固めるキャストも魅力的で、その点では前作よりもエンターテイメントとしての満足度は高い。

一方でプロットはなかなか厄介な様相を呈しており、複数の組織が各々の野心を剥き出しにしてストーリーに介在してくる全容を把握するのに時間がかかるのは問題だ。

前作はアッと驚く反転こそあったもののプロットは至極シンプルで、脚本とそれを保管する演出によって強力な推進力を発揮していたけれど、本作は複雑な相関図を敷いたが故にテンポが不安定な印象を受けてしまうのだ。

〈魔女プロジェクト〉を巡るそれぞれの思惑と行動がイマイチわかりづらく、さらに前作からの流れが一見すると断絶されたような作りになっているのも不親切で、「The Other One」と題された副題からも察せられる通り、本作は前作と接続しながらも“もう一つの別の物語”と捉えられることができる。

魔女ユニバースともいえるほどのスケールを狙っての橋渡し的な建て付けの作品とも言えるが、翻ってみると単体としての機能性に疑問が残る。
次作Part3でこのシリーズがどう変容していくのか引き続き期待したいが、正直なところ、一作目を超えているとは言い難い評価が難しい作品だった。
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