ブルー物語

ONE PIECE FILM REDのブルー物語のレビュー・感想・評価

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
4.2
◇元のクオリティはもとい、ミュージカル要素のバランスが素晴らしい一作◇

◎良かったところ
ワンピースの原作はほとんど見てないのですが、劇場版は4作目として鑑賞。

君の名はから目立ってきた音楽×アニメのコラボレーションですが、君の名はが「RADWIMPS」で「泣きたい私は猫を被る」が「ヨルシカ」なら、「ワンピース」は「ado」となったという感じでしょうか。

まず賞賛したいのは、ミュージカルな要素は取り入れながら、違和感のあるシーンが極めて少ないこと。歌と物語の切り替えをかなり繊細、丁寧におこなっている印象で、スッと見れましたし、ちゃんと歌うシーンで盛り上がっていて素晴らしかったです。

そしてミュージカル以外のストーリー面でもかなりよくできていて、細やかな伏線や、驚きのトリックはそこまでないですが、しっかり主要キャラクターに意味を持たせていて良い。

登場人物が多いから、漏れが多くなりそうな中で、十分な拾い上げをできていたのではないでしょうか。

●良くなかったところ
とはいえ、すこしゴリ押しにも近いような展開は所々散見され、とくに主要キャラクター以外はただただ戦闘シーンで現れた敵をかっこよく倒しているシーンがつくだけで、あまり、映画の主線に乗れてない感じがあり、もうちょっとここはケアできる広がりが欲しかったなとは思います。

原作を楽しんでる方からすれば、キャラの活躍してる瞬間を見れるだけでエンタメとしては成立してるのだと思うので、この映画に関しては大きな問題だとは思いません。

そしてミュージカルについては、自然な流れに入れ込もうとしすぎて、ちょっと中途半端になってしまっている部分もあります。観客の中には見方がわからなくて、ストーリー、音楽、ストーリー、音楽、という構成になんだか漫然とした印象を持つ方も多いのではないでしょうか。

新しい要素を取り入れるときは、こういった、見方のチューニングというのも大切になるなというのを感じました。

あとストーリーは大まか良かったとは思ったのですが、善悪の対立構造が途中から骨抜きになって、そこまではいいですが、そこに差し込まれるメッセージがちょっとぼんやりしていたので、そこはもうちょっと意味付けできたのではないかと感じています。(意味付けあったかもしれないですが、あったとしてもわかりづらいです。)

◇総評
とにかく、全体的には素晴らしい。かなり大袈裟なストーリーですが、それに負けないスケール感のある演出と、張り巡らされたメッセージがあり、こういうミュージカルの文化を生半可で持ち込むと必ず一つや二つは目も当てられないくらいのシーンが出たりもするのですが、展開との織り交ぜ方や、楽曲そのものが素晴らしく、ブレませんでした。
なによりadoさんの歌声の圧が凄まじい。

ちゃんと描きたいこと描いて、やりきった感じがあり、とにかく見応えたっぷりの作品。

特に最後の最後の台詞はめちゃくちゃ良かったと思います。

まだ原作は読めてないですが、劇場版は今後も見続けたいですね・・
製作陣の方々、素敵な作品をありがとうございました。