ブルー物語

傷物語-こよみヴァンプ-のブルー物語のレビュー・感想・評価

傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)
3.9
◎いろんな”尖った表現”がしっかりと束になったようなそんな作品◎

結構前にテレビなどで鑑賞しましたが、劇場でもう一度見てみたいと鑑賞しました。前回の3部作も含めての意見としてレビューを残します。

◎良かったところ
改めてみると、この作品がアニメに与えた影響は大きいだろうなと思いました。今見ても前衛的で、独特で、熱を帯びている。

いろんなことが歪で決して日本アニメを代表する存在ではないけれど、表現の一つ一つが珠玉で高い満足感がある。

西尾維新から始まり、いろんなクリエーターの頭の中を純粋に詰め込んでいったような芸術性。いつ見ても刺激を与えてくれます。

物語としてみてみると歪ではありますが、そこも独特さがある。
どこか無機質なのに、しっかり心の機微は追っている。
展開もあって面白い

全部個人的な見解ですが、この作品においては、例えば群衆であるとか、多くの登場人物とか、丁寧な過去描写とか、そういう描き方がノイズになるのだろうと思います。

あくまで、映像、音楽、言葉遊び、誇張表現、そのほか惹きつける何か、を全体に散りばめて、物語はあくまでそれを表現するためのキャンバスのような存在なのかなと思います。

それは、抽象画とか印象画みたいな曖昧さも一見あるのですが、気持ちいいくらいいろんなことを削ぎ落としているので、一貫した表現として描かれており、不可解なことは続くが、無理解には陥らない。

よく、不可解な映画でおいていかれるようなことがありますが、この映画はそれがないので不思議です。

▲よくなかった点
とはいえ、周りの作品と比較してみると、描写や、展開の丁寧さにかける。

「置いてかれない」とは言いましたが、最初から一歩も理解できない人はとびきりに「置いていってしまう」そんな作品でもあるだろうなと思いました。

場面を省いたりする総集編ではその傾向がより顕著です。

結構こういう作品をやってみたいクリエイターの方も多そうには感じます。普通のアニメ映画だったら、もっといろんなことを丁寧に、複雑に、考えなければいけないはずです。

◎まとめ
という点で、いろんな意味で自由で純粋な作品だと思います。
それはただ自由に楽しく作られた、みたいなことではなく、集まった才能が表現上での曲芸的なパフォーマンスを発揮して、いろんな要素を統括、管理、微調整をしていっていったのかなと、それにより楽しめるエンタメ作品になっているのかと思います。

ハマってみしまうと何度でもみたくなるような作品でした。