ブルー物語

ファミリアのブルー物語のネタバレレビュー・内容・結末

ファミリア(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「家族に横たわる様々な問題やテーマを内容した強烈な一作」

◎良かったところ
大きなネタバレはないですが、前情報がない方が強烈な気がしたので、ネタバレ設定にしています。

役所広司と吉沢亮の二人はしっかり立役者でしたね。細やかな表情や動きに人格が宿っていて本当の親子のようでした。

とにかくショッキングな内容で、全く想像してなかった角度からガツンと殴られたような衝撃を覚えました、

ちょっと不器用な父親と、健気に育った息子、そこに常に横たわる社会の闇、不穏さ漂う展開の中、どんどんと最悪の交差点へと向かっていく。

何の情報も得ずに見たことなどもあり、とにかくショッキングで重たい内容。全体を通して監督と脚本の思惑通りで手のひらの上で転がされましたね。

演出面、演技面、プロットなどで、しっかり厚みを持たせながら、いろんな感情を味わう、正直、好きとは言えない映画ですが、伝えようとしたことを伝えるためのクオリティとしては十分すぎるものを感じました。

●よくなかった点

よくなかった部分の一つとしては重たすぎる展開は鑑賞者としてしんどかったですね・・どんどん追い打ちをかけるような展開はエンタメとして成立しない重さがあります、タイトルや出演者も相まって、内容に面食らった人も多いのではないでしょうか

そしてあとはMIYAVI演じる榎本海斗などヤクザ関連のキャラ付けや演技がすこし浮いてて好きじゃなかったですね。なかなか大袈裟な脚本でありながら、役所広司や吉沢亮はその役割を見事に演じきっていたところ、ドラマなどに出てきそうな色ものな役作り、個人としてはちょっと冷める要因でしたね、、

起こった出来事が極端すぎて伝えたいメッセージも少し不安定な感じもしました。

ー総評ー

脚本家のインタビューでは脚本には説得力のない部分がいくつかあったと言っていました。例えば実際にあるブラジル人団地の現状とのズレや、他人のために極端な行動に出る誠治さんの行動原理、そこにヒヤリングやリサーチを重ねてリアリティを増していった。

特に役所広司の演技は圧巻ですね。その時その時の演技ではなく、作品全体の演技を通して、脚本家が首を捻っていた部分をも成立させてしまう。

吉沢亮を交えた親子の演技は見ているだけで、なんだか微笑ましい気持ちにさせられて、それがこの映画の苦しさもになっている部分です。

所々気になるところはありながらも、その一本の芯が通っているだけで、映画としての強度は十分すぎると言えるでしょう。

世間的に取り上げられなかった一つの問題を「本物の気持ち」として実感させる非常に完成度の高い映画だと思います。