ブルー物語

君たちはどう生きるかのブルー物語のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

●エンタメとしては、可も不可もなくですが。この一人の人間にしかできない、探究を賞賛したい作品ですね◎

◎よかったところ
これぞジブリだと思える、確固たる世界観や、表現力は、やはりすごく見応えのあるものでした。
これをスクリーンで堪能できるだけで、見る価値は十分にあったなと思います。

この作品において(どの作品においてもですが)あまり厳密な解釈は多くの人にとって必要なものではありません。

宮崎駿自身も、映画に対して「私自身訳のわからない」という風に述べています。

それは決して、構造として未完成だったものを世に出したということではなく、言語化も整理もできていないような、未知の領域に自ら踏み込んで、本気で作ったと、そういう意味だと思うんです。

そんな中で、鑑賞者が何かを言語化することは、不毛な気がしますし。

一昨年に新海誠監督の出した「すずめの戸締り」はエンタメとして、すごく出来のいい作品でした。

それは一重に、観客に寄り添ってきた、監督の積み上げたものがあってこそですが、初期の作品にあった作家性は、その見やすさの裏に隠れていってしまう。

制作の第一線で、そういった作家性を隠すことなく、探究し続ける、その姿勢にすごく尊く感じますし。

これまでそれを続けてきたジブリだからこそ、安心できる。

改めて自分はジブリが大好きなんだなと、思わされる一作でした。

●よくなかったところ

とはいえやっぱり、過去作に見るような、見やすく、楽しめるジブリ作品は見たかったですよね、

今回は、突如現れる別の世界と、そこで躍動する主人公の気持ちの変化を描いたもの

アニメ的な表現力で、そこは最低限に伝わるものはあったものの、キャラクター同士の気持ちの躍動や、何か積み上がっていくものが、見えづらい。

終わりまで鑑賞してみても、なんか色々あったな、という感覚で。そこには物語に入り込めてない自分がいる。

それくらいこの作品にはノイズ的な、もしくはモヤがかかったような、要素が多い、それはおそらく、宮崎駿自身が、引退宣言を撤回して、制作に踏み切るほど、何か特別な思いがあったからかなとも思います

監督本人の作品への脚色は、主観混じりで、僕らから見れば、それは不可解なものが多い。

それは主観でもあり時代とのズレなのかもしれないですね。監督にとって、今の時代に何かを投げかけるなら、この形が1番だったんでしょうし。それは、強烈に作品に影響されるから、今後も同じような作品しか生み出せないかもしれない。

そういう意味で、昔のような作品は見れないのかもしれません。ですが今後も作品作りはするかもしれませんし。過去作に影響を受けた、現代の表現者だってまた現れるかもしれない。

少なくとも、今の時代にこの表現を繋いでくれた、宮崎駿と、その関係者には、期待と尊敬を込めて、感謝をしたいですね。

◎まとめ
作品本編と関係ないことをつらつらと書いた気がしますが、それくらいジブリ作品は、作品外のところで特別なんですよね、、

主人公は世界を創造することを拒否して、汚れた世界で友人たちと生きてくことを決意した。

でも、その手には、世界を創造するための、石が一つ握られている。

青鷺はそれの力は弱い、という。

今回の作品を見た鑑賞者がその真意を見出すことができないように、「創造」から伝わる力には限度がある。

でも、きっと次の時代へつながっていく。だから、僕みたいにつらつらと考えず、純粋な気持ちで見ていれば、楽しめる作品だと思います。