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渇水のbackpackerのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.0
「流れを変えてみようと思ったんだ」

身近にある当たり前の必要性を思い返させる、静かな良作。
複数の社会問題を内包したドラマは、心を殺して生きてきた水道局職員・岩切(演:生田斗真)の変化を軸に描かれます。
人と人との繋がりがガタガタな社会。渇いているのは、世界か、自分か。

職場、訪問先、家庭で人と接するとき、「自分が自分じゃなくなる」ことに気づかないよう生きてきた岩切が、渇き果てた心に水を注ぐキッカケになるのが、自らが停水執行に訪れた家の幼い姉妹との出会いとなる。書き出してみるとだいぶドラマチックな展開ですが、実際は粛々としたもので、渇ききった砂っぽい絵作りと合うように、淡々としています。
頻繁に挿入されるタバコのシーンも、水の無い中で火と煙だけが頻繁に(水を飲むように)登場するというのがイイですね。


生田斗真の無味乾燥な眼差しの演技と、そんな表情のクロースアップが強いインパクトを残しました。
一方、子役二人の演技はちょっとイマイチで、数日後に見た『怪物』の子役達の演技があまりに良かったこともあり、その点の残念さに拍車がかかりました。この先、是非とも頑張ってほしいですね。
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