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リバー、流れないでよのbackpackerのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
3.0
ミニシアター系小規模邦画におけるプチブームとして、日常にSF要素を混ぜ込む”少し不思議"系の物語が流行してからはやいくとせ。
中でも多く取り扱われる題材が、〈タイムスリップ〉〈タイムループ〉〈タイムリープ〉の時間モノ三銃士。特に、タイムループとタイムリープの組み合わせは物語を勝らませやすいうえに、空間的にはワンシチュエーションに近い状況で話を展開させることができるため、低予算が当たり前の日本映画界のお財布にも優しい、頼もしい設定です。
2022年も『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』が大ヒット拡大上映をし、小規模邦画界限を賑わせた記憶が新しいですね。
そんなジャンルの新たな1作となったのが、『リバー、流れないでよ』。劇団ヨーロッパ企画と下北沢のトリウッドが製作し、クラウドファンディングで予算を集めた小規模作品ながら、京都の貴船というロケ地も功を奏し、素晴らしい仕上がりとなったこの作品もまた、〈タイムループ〉と〈タイムリープ〉の設定を巧みに操り観客を楽しませる良作でした。

2分間のタイムループに囚われた旅館の従業員と宿泊名
達は、懸命に脱出方法を探るも、繰り返される時のカによって、胸の内に秘めた本音をぶちまけることになり、いつしか関係性が崩壊。思いを包み隠さず吐露すると、喧になるのは仕方のないこと。でも、荒ぶるままに言い争う直球の姿に、どこか羨ましさも感じます。喧するような性質ではない自分だからこそ、偽らざる本音のぶつかり稽古へのある種の憧れを感じるのかもしれません。一度バチバチにやりあって、和解の先に深い友情を獲得する。なんて少年漫画的な夢想の世界でしょうか。
大人になると大抵の場合、代替手段的に酒の場を用いた飲みにケーションで、同様の効果を得ようとしている節がありますが、そこまで酒好きでない身としては、迷惑極まりないというシチュエーションになることもしばしば。故にこそ、宿泊客組の宴会→喧庫→和解→再びの宴会という構図には、少年のように戦って、大人な着地点に戻ってくる美しさを感じました。

タイムスリップ・タイムループ・タイムリープという超常の異常事態に直面したら、人はどんな行動をとるのか。この思考実験に近い状況設定が、汲めども尽きぬ泉のように、良い作品をドンドン生み出して、小規模邦画界隈の活況を維持してくれることを願い、また応援していきたいと思います。
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