サラリーマン岡崎

チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしいのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

4.2
「30歳まで童貞だと、人の心が見える魔法使いになる」という設定を
上手く生かした映画になっていた。

ドラマを通して、人の心が見える様になった安達は、
恋人の黒沢の思いが見えず、魔法を使おうとする。
彼らはまだ分かり合えていない状態。
本質的に分かり合えるには魔法なんか必要ない!そんな話にしっかり仕立てているところがさすが。

そして、わかり合っていく中で、ふたりがひとつになる過程で、しっかり結婚の意味、LGBTQに対する制度に対するメッセージも発信している。
ドラマではBLに終始していたが、映画ではしっかり社会性も込める。
安達が怪我をして、状況は家族に伝えられたのに、恋人である黒沢には伝えられなかった。
彼らは結婚ができないし、戸籍上では家族になれない。
けれども、彼らの家族=親と関係を持つことで、家族になれる。
家族になることは互いの安全だとかをしっかり確認できる為にも必要なスキームだと気づかさせてくれる。

そして、一緒に生きていくことは、お互いがお互いを成長させていくことだともメッセージとして込めている。
もともとドラマでも、安達の成長ストーリーとして描かれる中で、
途中の話で、実は黒沢も悩みがあり、安達により助けられていたことがわかるエピソードがある。
人はそういうところで、大切な人の存在に気付き、それが好意に変わることがあると思う。
恋人同士になった二人も、段々とお互いがお互いを成長させていく。
一緒に生きることは、段々と自分も変わっていくことかもしれない。

「人の気持ちがわかる魔法」という仕掛けは映画ではネタとして活用されていたが、
映画化にあたっては魔法を使うのではなく、しっかり相手をわかり合う重要性を伝えつつ、
わかりあったふたりがひとつになっていく意味を伝えていく。
軽く観ていたドラマで、時間が空いたので劇場版も観に行ったが、
意外やちゃんとした作りになっていた!

でも、ドラマの時から、この世界が優しく描かれていたし、
変なお色気シーンとかもなく、本当に優しさに忠実な作品だなと感じていたので、
なんだか、それがとても生きた良い作品だった。