サラリーマン岡崎

瞳をとじてのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.7
すごく計算尽くされた作品。
しかも、作品内だけでなく、31年前の作品からの計算もあり、とてつもない。

そもそも、映画における「計算」は記憶からくるもの。
前に映されたシーンや、過去作の記憶から、
今映されてるシーンの意味がより深く感じさせる手法のことだ。
この映画自体のテーマが「記憶」であれば、
手法までもがテーマに従順であるところが、とてつもない。

「記憶」がテーマのこの映画はある男の過去を辿っていく。
本人はもしかしたら忘れたいかもしれない。
けど、それでも過去を辿るので、結構容赦ないなとも思う。
でも、そこには親子という絆があるからこそ、
過去を辿っていくべきだと、
その過去には愛があったと、この映画は訴えている。

人と人が繋がっていれば、そこには愛がある。
それをこの映画は歌で表現している。
歌を人と一緒に歌うことで、その人と繋がる。
そして、主人公が過去に関わった様々な人々と再会することで、そこに愛があったことを思い出す。
確かに、僕も同居人と歌を歌うときはとても幸せだし、
久しぶりに会う友人と話すと、過去の楽しかった思い出を思い出す。
当たり前かもしれないけど、
そんな日常的な幸せのひとときを思い出させてくれる。

そして、この映画は「映画」で記憶を思い起こさせる。
確かに僕たちは映画を通して、自分の人生を投影させ、過去の楽しかったこと・辛かったことを思い出す。
それにしても、31年前の作品をも思い起こさせるつくりはズルいぜ…。
31年前の作品を見てる人が羨ましい。