サラリーマン岡崎

ボーはおそれているのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.5
今回こそは愛で終わるのかな…と後半1時間前くらいまでは感じていた。
が、そんなはずはない、相変わらずの容赦のない結末。

第一章はボーが暮らす身近な街の怖さを描き、第二章は家族の中に潜む怖さを描く。前半で外にも中にも怖さがたくさんあることを伝えてくる。
第三章はそんな中でも家族愛を求める主人公像が描かれる。だから、そんな恐怖が渦巻く社会の中でも、ボーは愛を求めて彷徨っているのだと感じさせ、その後に亡き母がいる実家に向かうから、「あぁ、今回は愛で終わるんだ」と勘違いしてしまったよ。

8割はボーが様々なところで受ける暴力や恐怖とその中で彼が求める「愛」を描くので、観客はボーに対しての哀れみを感じる。だからこそ、最後に断罪されていく彼に対して、とても衝撃を受ける。
ただ、それが最後の最後でとても納得させられる。ボーは優柔不断に生き、何もかもから逃げているからこそ、いろんな人を苦しめていることが最後の最後でわかる。何事からも逃げ、恐怖渦巻く街で助けを求める人にも無視し、何気なく入った家庭で親がボーにばかり世話をし、それを抵抗もしないがゆえに、その家の娘は嫉妬する。
多様性の時代に、すごい、この人の弱さを認めないこの鋭さ…。

この観客が8割ボーを哀れむ構造になってるからこそ、最後のこの結末に対して、観客へも断罪させる感じがよりすごい。
アリ・アスターは本当にどんな人生を送ってきたんだよ…。