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RRRのFilm日記係のレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.7
【狂うほど面白くて、あっという間だった3時間】
何がすごいって、誰もが経験しているおとぎ話のような王道ストーリーを、一寸のケレン味もなくやり遂げているところ。シンプルなことを200%の熱量で表現したものが、最強なんだなって感じさせられた。

【心に潜む童心を呼び起こす強烈な絵の連続】
この映画の特徴の1つとして、幾多に渡り惜しげもなく「見得を切る」映像描写を連発してくれるところであろう。漫画的な気持ちよさ優先のカットによって、ここまで無垢な童心と興奮が呼び起こされるとは、驚きであった。正直、少年時代の方がこうした「いかにも」な映像に対して、斜に構えた態度であっただろうが、大人になるにつれて映画に対して純朴なカッコよさに心が震えるようになってきたように思える。

【状況説明に一切依存しない音響表現とミュージカル描写】
インド映画ならではのダンスシーンに触れるのも久々のことであったが、正直ナメていた。ミュージカル映画としての個性をちゃんと際立たせていた。セリフではなく、BGMも含めた歌と音によって支えられた映像で状況を伝えてくれるため、作品のリズムを生み出しており、観客を没入させることに秀でまくっていた。

【『トップガン・マーヴェリック』に続き、映画本来の魅力を回帰させてくれる一作】
映画を社会現象との接続として捉える兆候、そして多様性が謳われるなかで二元論的な構造を排して万人への配慮への過度な気遣いが見られようになった昨今の映画の傾向が渦巻く中で、本作は映画が本来持つ可能性を再認識させてくれた。これは『トップガン・マーヴェリック』も同様である。小難しいストーリーや考察されることを前提とした昨今の映画様式、そしてサブスクが浸透していく中で映画館の魅力に対する人々の関心が希薄化していく状況に対して一矢報いるとでもいうのだろうか、わかりやすいストーリーの中で、映像によって圧倒させる、これこそが一世代前の人々が映画に抱いた可能性と魅力だったのではないか。コロナを経験し、あらゆる社会現象や人々の内面に対して、合理的解決を求めた結果、キャパオーバーを起こしている今だからこそ、論理に全身を委ねるのではなく、純粋な感動によって心振るわせる経験が非常に新鮮で冷や水をかけられたような心地であった。

面白さ:1.0 脚本:0.8 人物:0.9
映像:1.0 音楽:1.0
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