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キングダムのFilm日記係のレビュー・感想・評価

キングダム(2019年製作の映画)
4.1
予告編を観たとき、日本のマンガを実写かしてもだいたい面白さに欠けるよな~(実写にして正解だったと思うのは二十世紀少年くらい)と思っている私にとって、「おやっ?これは案外ありかも!」と思って映画館に足を運んでみた。観てきた率直な感想としてはメチャ面白い!!ついにマンガ実写に対する私の牙城が破られた心地でいる。レッドクリフや300を彷彿とさせる映像クオリティー。一人の役者が二役やるという設定。登場人物のカリスマ性。どれをとっても実写映画向きであった。

紀元前245年の古代中国、春秋戦国時代。西方の秦国で身寄りのない戦争孤児の信が、後の始皇帝となる秦国の大王の政との出会いをきっかけに、「天下の大将軍」という夢を胸に戦場に繰り出していくというストーリーだった。

まず何よりも印象的なのは映像のクオリティーだった。基本的に実際にあった春秋戦国時代をベースにしているということもあって、変なCGを入れなければならないわけでもなく、また登場人物の出で立ちも甲冑なので、マンガの出で立ちに寄せすぎていて変!(ジョジョの奇妙な冒険の実写版が良い例)というわけでもなく、素直にいち映画として違和感なく観られた。特に戦いが始まる正にその時、皆が剣を抜くシーンは大河ドラマの平清盛を観ているかのような興奮にかられ、夢中になるあまりにやついてしまったほどだ。

ただ、場面の転換の時に、パワーポイントで見られるチープなスライド切り替えかのようなエフェクトを多用していたのは、だいぶ気になった。

ストーリーに関して、どうやら原作と全く同じという訳ではなく、多少の修正は加えられているようなのだが、原作を2,3巻までしか読んでいない私にとっては、王宮を奪還するという設定はよくあるものであったし、起承転結がしっかりとしていて、映画単体として普通に楽しめるものであった。(キングダムファンであれば違った意見もあるかも知れないが…)

登場人物に関しても、皆素晴らしい演技であった。大概マンガを実写化した場合、俳優の多くがマンガに書かれた口調でマンガに書かれたセリフを忠実に再現しようとするあまり、実写だと演技がオーバー過ぎたりしていて、物語に集中できないことが多い。それゆえにマンガを実写化した映画に対する印象が悪くなる。だが、この映画ではその違和感を感じることが少なく、物語に集中することができた。

特に秦の大王政と主人公信の親友である漂の二役を演じた吉沢亮は素晴らしかった。前半(漂)と後半(政)で見られる、自分の兵の指揮を高めるシーンはこの映画で最も好きなシーンと言えよう。

そんな中で、主人公の信を演じた山崎賢人の演技が一番引っ掛かることが多かった。先ほども述べたように、マンガに忠実に演技しようとするあまり、一人だけ戦隊ヒーローのセリフっぽく見えてしまう部分が多かったように思われた。(鼻息を荒くするシーンにあからさまに鼻をぴくつかせるなど)

気になる部分も多かったが、全体的に見れば、素晴らしい出来の作品であることは間違いないし、何よりもマンガを実写化してここまでの出来となったのにただただ驚きを隠せない。ぜひ次回作も観てみたいので、皆さんにもぜひ観て欲しい!この映画はコケてはいけない映画だと思う。

面白さ:1.0 脚本:0.8 人物:0.7
映像:0.8 音楽:0.8
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