【我々は恋愛に呪われている。本作はそう語りかける。】
「恋愛とは生きている以上は逃れられないもの」
物語冒頭に謳われるこの言葉が忘れられない。
・友達以上恋人未満
・友情を越えた感情
・友達関係から恋愛関係に発展した
etc.
こうした身の回りに当たり前のように存在する言葉に暗黙に込められているのは、恋人関係を友達関係の上位概念としてみなす無意識な私たちの価値観である。そんな恋愛至上主義に私もまた呪われている、間違いなく。
恋愛に興味がないと言う人が現れても、「恋愛を知るのが怖いだけでしょ？」「結局性欲はないわけないでしょ？」そんな作中のセリフを吐いてしまう自分が容易に想像できる。
それもすべて、「恋人がいない奴などに人権はない」と言わんばかりの、手を繋いだカップルの後ろ姿からの刺すような視線を、勝手に感じてしまっているからであろう。
【かすみは最後、逃げたのか？前進したのか？】
僕は逃げたと思いたい。その方が、社会の目線に生き方を犯されまいと決心する勇気になるから。
2022年に自分を苦しめていた煩いを、溶かしてくれるような、否、一層煩いの底に陥れたような、そんな作品として本作は2022年のトップ5に滑り込んできた。
面白さ：0.9 脚本：1.0 人物：0.8
映像：0.9 音楽：0.9
