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ベイビー・ドライバーのFilm日記係のレビュー・感想・評価

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)
4.0
【冒頭6分に凝縮された本作のサウンド・エフェクトの妙】
本作の特徴は、なんといっても劇中曲がBGMでなく、物語世界の中で再生されているということだ。主人公が事故の後遺症で耳鳴りを患っていることから、運転中はイヤホンをつけて爆音で音楽を聴いている。主人公が何を聴いているかでその主人公の情動的移り変わりや物語的な展開を見せてくれていることから、とても没頭して観れる作りになっている。中でも、冒頭の6分間に渡るカーチェイスシーンは、本作の中で一番好きなシーンだ。Bellbottomsに合わせて全員がドヤ顔するところから始まり、曲に乗る主人公、そこから警察を撒くドライブテクニックを見せるところまで、台詞は何一つなくひたすら音楽が流れているだけで、物語の世界観や主人公の性格、そしてそのドライブテクニックの凄さを説得する力が凄まじい。「語るより見せる」を体現する良作であることを、最初6分で約束された、そんな心地をもたらされた。

【正統派のアクションメロドラマにほんの少しのコメディ要素】
その後メインストーリーに入った本作は、思いのほか正統的で分かりやすい構成の話であった。自身の正義感と現実の葛藤、愛する者との出会い、切れない契約関係、それらをかき乱す個性豊かな登場人物の乱入などなど。正直話のオチは前半でなんとなく想像ができてしまう内容であった。それでも、この作品が魅力を持続していた要因は、さりげなく香ってくるコメディ要素であろう。冒頭のBellbottomsに合わせたドヤ顔もその一つである。他にも、助手席の仲間が前進を合図した途端主人公がバックする場面や、終盤車同士が壁に突っ込みながら向かってくるところで、ぶつかる度に車内で掛かっている音楽がブツ切りになる演出など、いかにも笑わせにきているわけではないが、物語の流れの中でユーモアを作り出す妙に秀でているところが、本作を他と差別化させてくれる要素であったことは間違いないだろう。

面白さ:0.8 脚本:0.6 人物:0.8
映像:0.8 音楽:1.0
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