彦次郎

RRRの彦次郎のレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.6
妹マッリをインド総督スコットに連れていかれたゴーンド族水の男ビームと彼を捕らえる捜査官となった炎の男ラーマの出会い・友情・試練・戦いを描いたインド発のスーパーエンターテイメントダンスアクション!
1920年を舞台に独立運動指導者コムラム・ビームとアッルーリ・シータラーマ・ラージュをモデルにし大英帝国を極悪醜悪な悪役として見せるプロバガンダ的な要素もありますがそれを圧倒的に上回る勢いと熱さで3時間視聴者を楽しませてくれる作品です。一言でいうと「細けえことはいいからとにかく観ろ!」。それで文を締めるのも味気ないので下記に長々と書いておきますが未視聴で興味を持たれた方は駄文は読まずに直ちに映画館(2023年8月時点でレンタル視聴も可)に向かっていただければ幸いです。

さてお話の方ですが、ゾンビ映画よりも大量のデモ隊を1人で『三国無双』の如く倒していくラーマ、自らを囮に狂暴な虎も捕まえてしまう(仲間の協力はあったけど)ビームというどちらも違うベクトルの強さで2人のキャラが明示されている分かりやすさです。壮絶な過去と使命を持つラーマ、そのラーマを「兄貴~」と慕う純粋なビームの友情も本作の見どころ。他のキャラも仏のような心を持つラーマの婚約者シータ、兄を信じる歌の上手いマッリ、スコットの姪くせに超善人なジェニーと印象的です。忘れていけないのがバクストン総督夫妻。夫スコットは処刑処罰に銃弾を使用とすると経費について語りだすクソ野郎ですが車が横転しそうなタイミングでジャンプして銃をつかんで発砲する超人性を持っています。フィクションだと悪い夫に対して奥さんは心優しい人が多いのが常ですが妻のキャサリンはビームのむち打ちに流血が足りないと激昂したあげく棘鞭を放り投げる悪辣さで演じたアリソン・ドゥーディは『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』の悪女ヒロインを演じており監督の采配センスを感じました。
2人が出会って阿吽の呼吸で危機に瀕した子どもを助けるスーパーアクションの末に握手するところが既に最高ですがこれでオープニングという恐ろしさで以降は次々とグレードアップしていきます。冷静に考えると実現不可能な気もしますが恐らく脳が『RRR』世界に浸されて違和感が無くなる仕様になっています。またアクションだけでなく「ナートゥをご存じか?」から始まるダンスバトル、感動的なラーマのオヤジの「装填」といった話の熱量が絶対に下がらないようにされている工夫の数々はインド映画の特盛のようで冒頭から結末まで楽しませてくれます。
ラーマが毒蛇にやられて解毒してからの復活や両足をやられてから治療しての復活とそれぞれの早さが往年の漫画『魁!!男塾』並みだったりと全編ツッコミどころ満載(そもそも子どもを助ける場面から荒唐無稽)ですが、2人が仲良くなるシーンで肩車していたり懸垂していたり等観ているとキチンと伏線は貼られていたり丁寧に作られていることが分かります。また長い話にありがちなナレーションではなく歌で分かるように小生のようなボンクラ視聴者に脳に刻み付けてくれる演出もインド映画ならでは良かったです。また拷問シーンも歌でビームが民衆を湧きたてる「武器」となるという単なる歌の披露でないのも素晴らしかったです。
日本におけるインド映画のヒットとしては『ムトゥ踊るマハラジャ』を更新するものらしいですが個人的にはそれも納得のクオリティだったと思います。

余談。
職場の同僚からお勧めされ小生が映画館に向かったのは2023年7月頃と既に2022年10月21日上映からだいぶ時間が経っていましたが映画館の席はだいぶ埋まっており本作の人気の高さが窺えました。
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