cocacorgi

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのcocacorgiのレビュー・感想・評価

3.0
こんなはずじゃない。ホントはもっと輝ける。我が子のせいで人生狂った。娘がレズなのは悪い何かが憑依してるせい。ジョブトゥパキに乗っ取られてる。殺される。etc...
典型的なヤバいこと言ってる人の言説そのままが実際にファンタジーとして展開する、ものすごくキッチュな笑いがこんなにも明るくキャッチーに。
でもそうやって自分以外の何かに原因を求めがちなのは私もそうだし、無限の選択肢の中でいずれどこかで自分が重なる。
娘への最適でなかった接し方の原因と責任はぜんぶオトンになすりつけたままそこに対しての反省は控えめに、ダメな私は変わったのであなたを理解して許しますのスタンスの様式美にかこつけて雰囲気ハッピーで終わった感はあったけど、あくまでも内省の物語でまとまったようにも見える。外側の世界を広げながら、己の奥深くに行くのはダニエルズ。
オトンも旦那も娘も大事っちゃ大事、でもべつに血の繋がりだけが重要ってことでもなく、顔見知りの他人も初見さんもまだ見ぬどこかの誰かだって、もしかしたら別の世界線では非常に近しい間柄かも知れない、ならそうなって然るべき素因は今の人生にもあったはずで、みんなにみんながそうなれる選択肢があったはずで、それが何でどうしてスレ違って、反目しあって、敵対して、邪険にして、排他して、憎んで、憎まれて、対立しちゃうのか。
ねえ、あんたら争ってますけど、この前行ったバースでは指を舐め合ってましたよ?なのに今そこで攻撃しあってるの滑稽じゃない?
スイスの次にこれってセンスは極まってるし、数々の賞を獲ったことで、これを笑い事として消費するのも良いんだよとみんなの許しを得た気もする、おちんちん、バランス感覚が良い。
だからたぶんおもしろい、けどハリウッドスケールの三谷幸喜を見た気分でもある。
素直に盛り上がれる限度を超えてのクライマックス、こっちの笑顔がだんだん引きつって真顔になるまで続く。気持ち良くひたってられる時間を超過してクドさが残った印象(前作からちょくちょく笑いを相殺してくる節はあったけど)
でもこれ作る方だって、どこまで見てる側に伝わるんだか手探りで当然の煩雑さ。足りないより良かろうってことでぎゅうぎゅうに詰めて、伝え漏れがないように強調に強調を重ねて、大事なことは何度か言わせて、感動は少し長めに尺をとって…。
そんな丁寧にやんなくてもどっちにしてもふわっとしか理解できないから、もうちょいコンパクトご所望。
あとごめんミシェルヨーって誰よ。
そんなみんなご存知ミシェルヨーって感じで来られても、ノリきれなかったのこれ大きいかも。別のバースでならファンだったのに〜。
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