このレビューはネタバレを含みます
『ティル』
原題 Till 映倫区分 PG12
製作年 2022年。上映時間 130分。
劇場公開日 2023年12月15日。
1950年代アメリカで、アフリカ系アメリカ人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなった実在の事件『エメット・ティル殺害事件』を劇映画化。
ダニエル・デッドワイラーが主人公メイミーを熱演し、ゴッサム・インディペンデント映画賞など数々の女優賞を受賞。
名優ウーピー・ゴールドバーグが共演し、製作にも名を連ねる。
1955年、イリノイ州シカゴ。
夫を戦争で亡くしたメイミー・ティルは、空軍で唯一の黒人女性職員として働きながら、14歳の息子エメットと平穏に暮らしていた。
ある日、エメットは初めて生まれ故郷を離れ、ミシシッピ州マネーの親戚宅を訪れる。
しかし、彼は飲食雑貨店で白人女性キャロリンに向けて口笛を吹いたことで白人の怒りを買い、8月28日、白人集団に拉致されて凄惨なリンチの末に殺されてしまう。
息子の変わり果てた姿と対面したメイミーは、この陰惨な事件を世間に知らしめるべく、ある大胆な行動を起こす。
というのも、他の多くの人たちと同じように、この物語の結末を知っていたからだ。
事件のあらましを知ってる人たちと同様に小生にとっても、今作品を見るのは苦痛になるだろうと分かってた。
『胸が痛い』ちゅうだけでは説明がつかないが、それはこの悲劇的な物語がいかに今作品で見事に語られているかを証明している。
今作品は、役者の演技、事件の正確な描写、そういった点で力強く、並外れた出来栄えやった。
今作品は、起こったことを合理的に正確にとらえ、歴史におけるこの恐ろしいエピソードを立派に捉え、伝えていた。
1955年にミシシッピでエメット・ティルに起こったことは、エメット・ティル殺害事件の真相を追求した伝記書『エメット・ティルの血』や、『母が息子を送り出した時と出迎えた時』ちゅうリサ・ウィッティントンの手厳しい絵画、そして、ボブ・ディランの曲"ザ・デス・オブ・エメット・ティル"などに、多少なりとも触れてきたし、小生も少なからず人種差別で嫌な経験もあり何年も何年も悩ませてきた。
このことを世界中の人々に知ってもらうことは、このよくできた映画の形を含めて、とても重要なことやと思います。
列車に乗る前にエメット・ティルが母親に腕時計を渡したという感動的な事実など、知らなかった細かいことがいくつかあった。
事実を丹念に調べた結果明らかになったように、最初の恐怖は、あのレジ係の女性キャロリン・ブライアントが店でのエメットの実際の言動について、まったくの嘘を作り上げたことによってさらに増した。
作中、語ってるのは、彼が店の外で彼女にわいせつなジェスチャーをして『口笛』を吹いたということです。
生きているうちに(2023年4月28日に88歳で亡くなりました。)、そのレジ係の女性は、エメットが彼女に触れたり、脅迫したり、嫌がらせをしたりしたことがないことを認めている(『エメット・ティルの血』で証言を撤回したことを明らかにしている)。
彼女は家族、国民、そして世界全体に対して、嘘をついたのなら直ぐにも撤回する義務があったはずなのに嘘を突き通し、凶行におよんだ奴らに対して陪審員は無罪の評決を下してた。
リンチ殺人者たちが何年もたった後、公然と罪を認め、そのために報酬を得る。
被害者にとって、時間の経過とともに何度も何度も恐怖に追加される！
例えば、エメットが残忍な拷問を受け殺害された後、エメットの父親の軍歴が、エメット・ティルになされたことを貶めるために、南部の白人群衆によって著しく誤認されたことなどである。
アフリカ系アメリカ人が "ミシシッピ "でどのように呼ばれ、どのように評価されてきたか、そして、そのような勇気ある潔白な人々がどのように罵倒などで呼ばれてきたかは、刺すように恐ろしい。
1955年当時も、そして、今も、このような偏見に満ちたやり方や考え方を一部では教え込まれ、育てられ、心の小さな人たちによって行われている。
そんな1955年当時のあの場所でメイミーは、息子の物語を伝えるために、遺体を見せるという決断をした。
この事については賛否両論あるかと思いますが、あの日、あの場所で、そしてその後のムーブメントを鑑みたら英断やったと思います。
最後にボブ・ディランの曲を添付しときます。
The Death of Emmett Till.
Bob Dylan
"Twas down in Mississippi no so long ago,
When a young boy from Chicago town stepped through a Southern door.
This boy's dreadful tragedy I can still remember well, The color of his skin was black and his name was Emmett Till.
Some men they dragged him to a barn and there they beat him up.
They said they had a reason, but I can't remember what.
They tortured him and did some evil things too evil to repeat.
There was screaming sounds inside the barn, there was laughing sounds out on the street.
Then they rolled his body down a gulf amidst a bloody red rain
And they threw him in the waters wide to cease his screaming pain.
The reason that they killed him there, and I'm sure it ain't no lie,
Was just for the fun of killin' him and to watch him slowly die.
And then to stop the United States of yelling for a trial, Two brothers they confessed that they had killed poor Emmett Till.
But on the jury there were men who helped the brothers
commit this awful crime, And so this trial was a mockery, but nobody seemed to
mind.
I saw the morning papers but I could not bear to see
The smiling brothers walkin' down the courthouse stairs.
For the jury found them innocent and the brothers they
went free,
While Emmett's body floats the foam of a Jim Crow southern sea.
If you can't speak out against this kind of thing, a crime
that's so unjust,
Your eyes are filled with dead men's dirt, your mind is filled with dust.
Your arms and legs they must be in shackles and chains, and your blood it must refuse to flow,
For you let this human race fall down so God-awful low!
This song is just a reminder to remind your fellow man That this kind of thing still lives today in that ghost-robed Ku Klux Klan.
But if all of us folks that thinks alike, if we gave all we could give, We could make this great land of ours a greater place to live.
