ハマジン

Three Crowns of the Sailor(英題)のハマジンのレビュー・感想・評価

4.0
暴動下のワルシャワ、師匠の骨董商を殺害した学生が、船乗りを名乗る正体不明の男に「古い3クローネ硬貨」と引き換えに船に乗せてやると誘われ、ダンスホールで奇想天外な物語を聞かされる。バルパライソからシンガポール、タンジェ、ダカールと世界中を彷徨うように渡る、ラウル・ルイスによるシュルレアリスムな夢想の船旅。歯を引っこ抜かれた腹いせに船首から海に飛び込んだはずの男は翌朝何事もなかったかのように姿を現し、話しかけると「おれは別人だ」と返答する。誰が生きていて誰が死んでいるのか、もしかしたら乗組員はみな幽霊なのかもしれず、生死の境い目がひたすら曖昧な船上の生活。大量の人形が吊るされ、テーブルにはいくつものチューインガムが蓋に貼りつけられた小さな白い棺が置かれている、「処女マリア」というあだ名の娼婦の部屋。船乗りの背中の皮膚から這い出す幼虫。偽りの乳首と陰部をつけた踊り子「ファム・ファタル」。猥褻で狂暴な絵本のページを次々めくっていくような快楽に酔いしれる。
早朝の波止場での立小便から血だるまの撲殺に至る一連を、俯瞰気味の移動長回しカメラで追いかけるラストが最高に狂っている。独創的で激烈な暴力を撮ることのできる映画作家ラウル・ルイス、尊敬しかない。撮影サッシャ・ヴィエルニ。
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