ハマジン

サラゴサの写本のハマジンのレビュー・感想・評価

サラゴサの写本(1965年製作の映画)
4.0
分厚い写本の中の挿絵、褥で睦み合う2人の美女と絞首門に吊るされた2人の男(全編を覆う「反復の呪い」を表す図像)、それぞれのページの隣にはタコとロブスターがでかでかと描かれている。このシュルレアリスム的組み合わせからして最高のはじまり方。追剥と異端審問、死と暴力がそこら中に転がるスペインの荒野、その中心に位置する旅籠ベンタ・ケマダからどれだけ離れようとしても、何度もそこに戻ってきてしまうワロン人の大尉。旅籠の地下で、彼の「いとこ」と称するオリエント風美女姉妹に誘惑され髑髏の杯を飲み干すたび、目覚めると絞首刑場の下で首吊り死体とともに寝転がっている。ムスリムの姿をして現れる悪魔(=堕落)の誘惑、反復と循環と停滞による堂々巡りの話法など、そりゃあブニュエルは気に入って3回も見るわ、と納得の主題と形式。というか『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』以降現れる「挿話「内挿話「内挿話」」」の入れ子構造は、本作に負っているところが大きいのではないか。
ラスト、旅籠の地下出口?の向こう側に拡がる砂漠(空間的に明らかにおかしい)に置かれた天蓋付き寝台へ美女2人に連れられていく「自分自身」に手を伸ばして近づくと、向こうの「自分自身」も近づいてきたかと思いきや、それが鏡の反映!であったことに気づくショット、わけわからんすぎてシビれた。こういう瞬間が見たくて映画見てるとこある。
ペンデレツキによる控えめでポップなシンセの劇伴も作品にぴったり。
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