ハマジン

無防備都市のハマジンのレビュー・感想・評価

無防備都市(1945年製作の映画)
4.0
中庭でのサッカーと同じノリで爆弾テロをかますガキ共の集団が、どこまでもリアルに生々しくガキんちょをやっている。近所の大人や親のふり見てパルチザン道まっしぐら。この「大人の影響」がナチス政権を経た占領下ドイツで最悪の方向に振り切れると『ドイツ零年』になる。「ひと仕事」終えて洗濯場の下水道を奥から手前に屈みながら走るガキ共の群れのショットから、階段を上がるたび各家庭の玄関から響く火のついたような親の怒鳴り声にどんどん縮こまっていくガキんちょをとらえた俯瞰まで、一連の活き活きとした「子ども目線」の描写は、のちにトリュフォーが『大人は判ってくれない』で受け継いでいった姿勢。ナチによる住民一斉摘発に対し銃と手作り爆弾を抱えてしつこく立て籠る、片足のない松葉杖姿のガキのたくましいふてぶてしさにも同じ匂いを感じた。
後半はトーチャー・フィルムとしても質が高く、尋問室に座る神父の視線の先、わざと開け放たれた扉の向こうの机に置かれた火を噴くバーナーを、小さく、だがはっきりと画面に映すところからしてトラウマ級にヤバい。その後もネッチリ見せつけてくる拷問シーン、バーナーが肌を焼く瞬間まで映すの、当時としては相当画期的だったんじゃなかろうか。「戦時下においてなお奪うことのできない魂」という主題は、(カトリックの含みはさておき)時を隔てて『窓ぎわのトットちゃん』にも通ずる普遍的なものだと思うが、加えてゲシュタポの士官が漏らす「憎悪に包囲されている」という被害妄想の極致のような台詞に示される、ナチス側の絶望まであますところなく描いているのも凄絶。
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