ハマジン

現代やくざ 血桜三兄弟のハマジンのレビュー・感想・評価

現代やくざ 血桜三兄弟(1971年製作の映画)
3.5
陰キャ童貞青年「モグラ」こと荒木一郎、あの前髪のかぶさり具合からして迫真。一年後、『白い指の戯れ』で虚無的で格好いい掏摸役を演じる役者だとはとても思えない。失恋をし、ブランコに揺られながらヤケクソ気味に歌う『マリリンモンロー・ノーリターン』(当然だが声がいい)、酒をラッパ飲みする渡瀬恒彦とのシーソーを上下させながらの会話。鬱屈をためた末の、小池朝雄宅での突発的な暴力の噴出も忘れ難い。役者の動かし方をよくわかっている、躍動感に満ちた中島貞夫演出。
もはや「幼い」とすら見えるあどけなさの渡瀬恒彦に、どこまでも純朴な伊吹吾郎。この二人の「若さ」を活き活きと画面にとらえるからこそ、彼らが「やくざ」という名の巨大なシステムに容赦なく利用され搾取され引き潰されていくさまと、それを眺めるしかないインテリ崩れの菅原文太の無力感がより痛ましく際立つ。あの憎たらしい小池朝雄さえ、大阪誠心会の使い捨ての鉄砲玉でしかないという残酷。ラストの殴り込みに小池朝雄の持っていた二丁の拳銃が使われることも示唆的。燃え盛る業火の中、斃れる菅原文太が鳴らすドラムの一撃の寂寥感。一人取り残されるガラス越しの荒木一郎。
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