ハマジン

夜ごとの美女のハマジンのレビュー・感想・評価

夜ごとの美女(1952年製作の映画)
3.5
ルネ・クレールお得意のナンセンス・コメディ。平凡な男が退屈で冴えない日常に嫌気をつのらせ夢想する「古き佳き時代」への無限後退。明らかに『ミッドナイト・イン・パリ』の元ネタなのだが、ウディ・アレンが作中言及するのは本作ではなくブニュエル『皆殺しの天使』の方っての、どこまでもひねくれた小賢しい監督だなと改めて思ったりした。
紋切型の台詞&お歌に、テキトーすぎるペラッペラの書割背景と、ジェラール・フィリップ演じる夢みる音楽教師の想像力の貧困をまんま画面に見せる夢のシーンは出てくるたびに笑えるし、ディゾルヴなどの安易な手法を一切使わず、夢から現実へとシームレスに移行する演出の数々は切れ味抜群。
おもちゃの車のクラクション、ドリル、掃除機、車のエンジン音と、現実世界のノイズがオーケストラにどんどん混じってくる終盤からアナーキー度が加速していき、原始時代から現代までジープで文字どおり一気に駆け抜けるクライマックスの疾走感(逆向きで走る馬!)で最高潮に達する。バカバカしすぎてテンション爆上がり。
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