ハマジン

男の争いのハマジンのレビュー・感想・評価

男の争い(1955年製作の映画)
4.0
赤狩り以降のアメリカ映画が失ったものと、代わりに同時代のフランス映画が得たものの大きさについてついつい思いを馳せてしまう。デュヴィヴィエ、オータン=ララ、カルネなどのセットメインの撮監だったフィリップ・アゴスティニをパリの屋外に引っ張り出してロケ撮影をさせたという一点だけとってもダッシンは偉大。間違いなくヌーヴェル・ヴァーグへ到るラインを明確に方向づけた作品の1つだと思う。
中盤の無言の金庫破り、天井から通した傘を拡げて瓦礫が下に落ちないよう細工するさまや、重たい金庫を四人がかりでゆっくりと倒す(1人が下に入り込んで背中で支える)くだりなど、その「行程」を黙々とこなす集団の動きを、基本ミドル~フルの長めのショットで丹念に見せていく特異な話法は、メルヴィルをはじめとした後のフレンチ・ノワールのいわゆる「ケイパーもの」だけでなく、ブレッソン『抵抗』やベッケル『穴』などの「脱獄もの」にも脈々と受け継がれていく流れ。ダッシン自身が演じる金庫破り師セザールが音を立てないために履くバレエ・シューズなど、アイテム1つ1つにまで行き届いたディテールの豊かなこと。
前身トラックの主観的ショットを何回か映した後、「掟」によって金庫破り師を射殺するところでは逆にトラックバックで見せるくだりも強烈に印象に残る。元情婦への暴力の痕が、回りまわって男を追い詰める原因となる後半の皮肉。
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