ハマジン

肉の蝋人形のハマジンのレビュー・感想・評価

肉の蝋人形(1953年製作の映画)
3.5
どちらかと言われたらマイケル・カーティス33年版の方が好きだが、こちらも素敵な仕上がり。ド・トスは階段のアクションよりも、吊るす/ぶら下がる/落ちるなどの垂直の運動に注視するふしがあるように思う。
冒頭の放火場面、ガス燈の使い方が過去作よりも鬼畜度が増してるし、焼け爛れた蝋人形の、皮膚がずるりと剥がれていくように表面の塗料が溶け出し、首がボトリと落ちるまでの過程をじっくり映すところにも作り手の気概を感じる。
33年版のモガたちからは考えられないほど保守的な方向に先祖返りした時代設定と衣装。コルセットをぎゅうぎゅうに締め付けるヴィクトリア朝さながらの着付けを、カットを割らずにまざまざと見せつける。ヘイズ・コードがどれだけ大きな(退嬰的)文化変容をもたらしたのかが2作つづけて見るとよくわかるのだが、その割にカンカン踊りはオールOKっつうノリで、基準があやふや過ぎて私もうヘイズ・コード君の言ってること一つもわかんないよ!って気持ちになる。
怪人とヒロインとの追跡/逃走シーン、各人物の位置関係を観客に明確に示しつつ、しっかりハラハラもさせる撮り方には特に感銘を受けた。思ってもみない方向から突然画面にとび込んでくる、いわゆる「ジャンプスケア」の味をしめたホラー映画界が失ってしまった実直な演出がここにはある。
コワモテメイクで彫りの深い聾者の助手役に、ブチンスキー名義時代のチャールズ・ブロンソン。この頃からがっちりと腕筋がたくましい。生首の振りをしたり、取っ組み合いの末男をギロチン台にはめ込んだりと、脇役ながら大活躍。ラストショットもブロンソンの生首大写し(蝋人形の頭部だが)ですべてをかっさらっていく。
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