サラリーマン岡崎

僕らの世界が交わるまでのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)
4.6
思春期の息子と母の諍いという普遍的なことを描きながら、政治とエンタメ、階級社会、多様性、自己愛、もちろん親子関係など、多層的なことを描いているのがすごい。

でも、一番に伝わってくるのは
「目の前の人と向き合うことが政治的であり、エンタメである」ということ。

息子は中途半端に政治を語ることに興味を持ち始めたけど、自己満足な政治活動をして失敗をする。
福祉施設を運営する母親は、施設にいる少年に進学する重要性を押し付け、こちらも失敗する。
「良きこと」を行ってるつもりなのに、失敗する。
これは目の前の人をしっかり向き合っておらず、自己満な奉仕をしているからである。

でも、その究極が、親子関係である。
思春期になると反抗期も出てきて、彼女たちのように親子で諍いが起きる。
そこから逃げるのではなく、向き合うことで、相手の気持ちを汲み取り、相手の価値観を受け入れ、それに対して何かをしてあげたいと思う。
それがより大きいスケールになったのが政治であり、エンタメである。

自分だけの物差しで物事を捉えていては社会は良くならないし、何も面白くない。
けど、意外と自分の物差しを曲げたり、相手をしっかりみることをやれていないのが常。
身近な親子関係でさえそうなのだから。

すごくすごく普遍的な物語ではある。
けど、とてつもなく社会的な映画。