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カリガリ博士のmichiのレビュー・感想・評価

カリガリ博士(1920年製作の映画)
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タイトルからしてなんとなく不吉な感じはありましたがストーリーよりも演出が心を不安定にする。難しいことは分からないけれど、様々な表現で怖い不安な世界を作り上げていて、ドイツ表現主義の時代ってとても文化的に豊かだったのだろうなと思いました。
今では反則技のような結末も、公開時には斬新だったんじゃないかと思います。元祖どんでん返しでしょうか。最後までおもしろかったです。

ずっと気になるのが回想シーンのセットで、壁も窓もドアも家具も全部歪んで奇妙な形をしている。病んでる語り手の頭の中をそのまま表現するなんて発想すごい。同じく精神世界を扱ったヒッチコックの『白い恐怖』のダリのシーンを思い出しました。夢の中でうねうねした世界に入るのは、ここに影響を受けてるんだろうと思います。

カメラに絞りを付けた撮り方は、シーンの繋ぎでのアウト/インではなくて、焦点を絞るために使われていて、視点が落ち着かない気持ち悪さがありました。作り手が見てほしいようにコントロールされているような感覚でした。

4Kレストア版は作品の印象が変わるほどものすごく綺麗ですが(チェザーレが意外に美男なのが分かる)、画質悪い版も不気味さに拍車がかかって味が出ていたと思う。鮮明じゃないことで分かりづらい部分もあるけれど、昔の人が観ていたものに近いであろうバージョンで同じような気持ち悪さを味わうのも楽しみ方の一つかなーとprime videoで観ながら思いました。
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