うめまつ

宇宙探索編集部のうめまつのレビュー・感想・評価

宇宙探索編集部(2021年製作の映画)
4.0
此処ではない何処かへ連れて行ってくれる映画だった。「酒も電車も同じだ。すぐ移動できる」みたいな呑んだくれの台詞があったけど、映画も同じかも。もっと言えばアート全般が同じ瞬間移動装置だと思う。地上で生きる殆どの人間は凡ゆる理由から今居る場所に留まらなくてはならないけど、意識だけなら何処へでも行ける。それは普段は覗けない誰かの心の中だったり、近くて遠い隣の国だったり、銀河の果てだったりする。その手伝いをしてくれる作品が好きだ。

映っている場所は寂れた事務所とぬかるんだ田舎と僻地の山奥で、大体画面が灰色か茶色なので映像重視派としてはかなり辛い(し絶対ロケハンには行きたくないなと3回くらい思った)んだけど、語られていることや追い求めていることはやたらと純粋で美しい。途中で詠まれる詩もとても素敵だった。音楽の使い方も面白くて、何が映っててもショパンの別れの曲を流しておくと三割増しで切なくなるな、と思った。

主人公のタン先生みたいなピュアな偏人がかなり好きなので、親族だったら迷惑だろうけど他人なので全力応援姿勢。人間の身体に最低限必要なのは水と炭水化物と脂質とタンパク質と塩分(とあとなんか言ってたかも)だから、それ以外は無駄だとか言ってラーメンしか食べないとことか、自分の命<<<宇宙に行ける未来なとことか、どう見ても胡散臭い宇宙人のミイラの骨に多額のお賽銭払っちゃうとことか、宇宙以外には清々しいくらい興味がなく、宇宙に関する事なら脊髄反射で突っ込む感じ最高。ロードムービー仕立てでカメラもハンディ多めなので多少見辛くはあるけど、一緒に取材旅行している気分になれる。中盤結構間延びしちゃうけど、クライマックスの突き抜け方とラストの贈る言葉で全部取り返した感じ。宇宙人に遭えたら聞いてみたい事が切なすぎたし、意外なファザコン映画でもあった。当然その分スコアを加点した。

キティちゃんの加湿器/切断される宇宙服/伸びる黒い骨/鍋ヘルメットと町内放送の詩/日食の暗闇/燃えるテント/仏像の墓場/ロバとの遭遇/洞窟と毒キノコ/私達は壮大な詩の一文字
うめまつ

うめまつ