よく耳にする言語の中で、中国語の響きが一番好きかもしれない。ツヤツヤとした玉のように耳の中で転がる音。前半にとても印象的なモノローグがあるのだけど、これが別の言語だったらまた全然違う味わいだっただろうな、と思う。
とても静かでゆったりとした時間が流れている。映画がすっぽり微睡みのベールに包まれているみたい。物語としては、スープで親愛を示す優しい男性と、苔を研究するチャーミングな女性が出会って森の中をひたすら歩くだけの映画なんだけど、その森が深まるほどに、どんどん五感が解放されて行くような心地良さがある。木々のざわめき、遠くで鳴く鳥の声、近くを飛ぶ虫の羽音、風の後ろ姿、光の落とし物、土の呼吸、雨の足音。森を育む凡ゆるものの輪郭が音と映像で鮮明に立ち上がって来る。終わる頃にはすっかり森の一部になったような感覚だった。観るというよりは浴びる映画。ヒーリング効果絶大なので疲れた時にまた浴びたい。
