ケイスケ

ロストケアのケイスケのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.7
もう安楽死を認めてる国に行くしかないじゃん…😭

ある朝、民家で訪問介護センターの所長と老人の死体が発見される。検事の大友秀美は捜査線上に浮かんだセンターに務める介護士の斯波宗典と、センターの訪問先で40人を超える死亡者との関係性を突きとめる。献身的な斯波だったが彼にはある主張があり…。

面白かった。安楽死・尊厳死を扱った最近の映画だと『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』を思い出しますが、あの作品は最近問題になっている原作改変が多いらしいし、あまり褒められた内容では無かったです。本作はドクター・デスのようなミステリー仕立てではなく人間ドラマ描写が多いですね。

特に中盤の大友と斯波のそれぞれの主張はどちらの言い分にもとても説得力がありました。幸い自分にはまだ認知症の身内を世話した経験は無いので、斯波の言う「穴に落ちた人間」ではないのでしょう。だからと言って当然殺していい理由にはならないし、家族が救われたという主張も欺瞞でしか無い。

でもそれは体験した家族にしかわからないし介護疲れで殺人が起きているのも現実にあること。斯波のお父さん役の柄本明の演技が上手すぎて「殺してくれ」という叫びが本当に辛かった。ここは一番涙腺にきたシーンでした。

自分もこの題材については何冊か本を読んだことがあり、松田純さんの著書『安楽死・尊厳死の現在 最終段階の医療と自己決定』が非常に読みやすく考えさせられる内容でした。当然ながらこの映画の中で明確な解答は出ません。鑑賞した人同士で語り合うのも大事なことだと思います。