great兄やん

EO イーオーのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
3.9
【一言で言うと】
「エゴと野蛮の“傍観者”」

[あらすじ]
愁いを帯びた瞳と溢れる好奇心を持つ1頭の灰色のロバ。動物を愛する心優しきパフォーマーであるカサンドラのパートナーとしてサーカス団で生活していたが、ある日、サーカス団から連れ出されてしまう。そして辿り着いた地が次なる安住の場所となるかと思えば、それもままならない。予期せぬ放浪の旅へと繰り出すことになり、善人にも悪人にも出会い、人間社会の切れ端をロバはその瞳にじっと映していく...。

ロバの目線から映し出されるありふれた“蛮行”。我々の目線からだと気づきもしなかった残酷性が、動物を介してその存在感をハッキリ肉付けしていく…ごめんねEO、俺たち人間ってつくづく愚かな生き物なんですよ(-_-;)...

とにかく今作の創造主スコリモフスキ監督の“鬼才”っぷりがもうキレッキレで、88分という限られた中で如何に鮮烈なイメージを叩き込めるか、そのパワーが溢れまくったセンセーショナルな演出、それに描写の切れ味がもう抜群に冴え渡ってた。マジで85歳のお爺ちゃんが撮った作品とは思えないくらい。

劇中彩られるビビットな“赤”の演出もEOに訪れる“転機”として上手く効果を発揮していましたし、EOを演じたロバの憂いげな表情も心なしか人間の表情よりも純粋な“本質”を表しているようにも見えた。
まぁ実際ロバも考えて演技してるワケじゃないんですけど😅…それでも目線の動かし方といいなんとも芸達者なロバさんでしたね🤔

それにアート映画ならではの高尚なメッセージ性…かと思いきや意外とシンプルな風刺が効いた内容でしたし、ストーリーの6割がEOの放浪というなんとも掴みようのない展開ながらも、居場所なき場所を常に彷徨い続けるEOの儚げな姿に最後までドキドキされっぱなし。
最終的にEOが行き着く場所は果たしてどこなのか...ネタバレになるのであまり言えませんが、ある意味リメイク元のラストシーンよりも更に皮肉と悲劇に満ちた締めくくりでしたね😔...

とにかく“バルタザール”からEOへ。ブレッソンが描いた“厭世的な無情”をスコリモフスキが現代へとアップデートした、まさにEO然り動物の気持ちを“勝手に”推し量る人間たちの行為をシニカルに描いた一本でした。

スタイリッシュな映像美に先鋭的なサウンドエフェクトなど、アーティスティックな個性が光りつつも一貫して人間の“滑稽”な姿を映し出したスコリモフスキ監督。

どことなく『異端の鳥』に近似性もあったりするが、個人的にはジョーダン・ピールの『NOPE/ノープ』と同じようなメッセージ性を感じましたし、極端ではあるんだけど分かりもしない他者の“心情”を推測しては“断定”する人間って🤦‍♂️...いやホント、ごめんよEO(二回目)