Demoto

EO イーオーのDemotoのネタバレレビュー・内容・結末

EO イーオー(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

私達がEOの境遇に同情できるなら、最早彼の目は私達の目だ。

かつて放浪の物語は神話的世界に果敢に挑むものだったはず。
ロバのような無垢なか弱い魂にとって、私達の世界がそのまま地獄の有様を示しているのだから救いがない。

サーカスの幕開けこそ幻想的で美しく、これは私達が放逐された故郷の美しさそのものに重なる。完璧でなくても無条件に愛してくれる人がいたところを去った私達は、愛なき世界で死を予感させる絶望の中、終わりを迎えるまで歩み続けなくてはならない。

馬のように草原を駆ける夢を見ても、夢は夢でしかないので現実には馬は醜く猛り狂い、ロバはロバでしかない。 
確かにその目で美しく駆けるその姿を見たはずなのに、一体何を間違ったのか?
墓の立つ森の中で動物の血が流され、心の良い人々は性と血と金の中で倒れ伏している。

彼の名を知るただ一人、少女のEOと呼ぶ声だけがこの物語で美しく、しかしその声にも見放された先には飼いならされた牛たちとともに空気銃の音だけが待っていた。
私達は故郷を去るべきではなかった、しかして故郷は無い。彼を呼ぶ声も、バイクに乗って知らない世界へ行ってしまった。この時点で彼の運命は決まっていた。この世界がこのようであるうちは。
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