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ゴールデンカムイのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.0
よくあるやっちまった感じの人気漫画実写化じゃあなく、
原作ファンも大満足の、忠実かつ誠実な実写化。

公開4日目、新宿ピカデリーの1番スクリーンで観てきました。


【1】「俺は不死身の杉元だ!!」
1980年代、ジャンプ漫画のアニメ化といえばどいつもこいつも「主演:神谷明」
それと同じくらいの勢いで、近年は人気漫画の実写映像化といえば、どいつもこいつも「主演:山﨑賢人」

数々の大人気漫画が実写化され、
そして、決して少なくない数の無残な屍を積み上げてきた日本映画界。

けれどここ数年、以前とは比較にならないほど打率が上がっているような気がするのは気のせいだろうか?

数多の人気作が爆死してきた時代も今は昔。
性懲りもなくまた実写化か!
え...あれ?意外と見れるような...!??

娯楽の多様化で、決して楽ではない映画界。
そんな邦画界の最前線で、「俺は不死身の杉元だ!!」とばかり無双し続ける男、山﨑賢人

東池袋を闊歩するコスプレイヤーばりの衣装で東方仗助を演じた黒歴史も今は昔。
今や彼の演じる漫画実写化作品にハズレなし

うおぁあああ!と藤原竜也式の雄叫びをあげるだけの演技はもう過去の話
劇場のスクリーンの中にいたのは、まぎれもなく、大人気漫画『ゴールデンカムイ』の主人公、不死身の杉元だった。

日露戦争のシーンで見せた運動能力と、風呂のシーンの鍛えた体が特によかったです。
本作のために10kgくらい増量したらしい。


<以下、ネタバレあり感想>




【2】爆音が素晴らしい
明治末期の北海道を舞台に、広大なスケール感で展開される『ゴールデンカムイ』のストーリー。

本作を実写化するにあたって、映像のスケール感がしょぼかったら悲惨な作品になってしまいかねないところ、この点はかなりクオリティが高かったと思います。

・冒頭の日露戦争203高地での戦場シーン
・ヒグマの登場するシーンのすべて
・終盤、馬で疾走するアクションシーン
etc
ピカデリー1番スクリーンの音響が良かったのもあるかもしれないけれど、
どこをとっても大音量/大迫力で素晴らしかった。
特に、劇場中に響き渡るヒグマの咆哮は一聴の価値あり。

昨年公開の「コカイン・ベア」に負けるとも劣らない、ド迫力のクマ描写に拍手喝采です。


【3】キャラクターの再現度たるや
山﨑賢人がアクション時/ギャグ時とも、これぞ杉元って演技を見せてくれたのはもちろんのこと、
その他のキャラクターたちもかなり再現度高くて高クオリティだった。

特に個人的MVPは玉木宏の演じた鶴見中尉。
特殊メイク含めた造形/変な脳汁が流れてくる描写/悪役として映える立ち居振る舞い、すべてが最高だった。のだめの千秋様と同一俳優とはとても思えない。次作も楽しみです。


【4】その他キャスト
■白石(矢本悠馬)
矢本さんは相変わらずうまい。
よくよく見ると原作の白石とはけっこう違うような気がしなくもないが、実写でやると見てられなくなりがちなギャグシーンを完璧にこなす流石の腕前。
鉄格子抜けてぬらぬら入ってくるシーンで劇場中爆笑してた

■土方(舘ひろし)
明らかに舘ひろしなのに、漫画のまんまの姿で笑った。絵力強すぎ

■アシリパ(山田杏奈)
原作よりちょっと大きいかなとは思ったが、子役にあれだけセリフを言わせるのは難しいと思うのでやむなしか。
演技がヘタな女優さんというわけではないんだろうけれど、アシリパというキャラが(アイヌ文化紹介を中心に)説明的セリフ多すぎなキャラクターなので、ちょっと難易度の高い役だったのかなという印象。
ビジュアルはよかったと思う。

■アシリパの祖母(大方斐紗子)
再現度やばすぎる

■牛山(勝矢)
あのふざけた額のキャラデザで、ギャグにならないビジュアルで演じ切ってるのすごい。
アクションもめちゃくちゃ良かった。遊女ぶん投げるシーンやばい

■尾形(眞栄田郷敦)
原作では人気キャラも、登場時間短すぎな件。短剣のアクション素敵

■二階堂兄弟(柳俊太郎)
サイコ感あって良かった。アクションも◎


【5】ストーリー
原作漫画の1~3巻くらいまでをほぼそのまんまやった感じ。
杉元の動機のくだりを少し調整してたかな?

あまりにも原作に忠実なので、ファンからの不満苦言はほぼないだろうなと思う反面、
全31巻ということを考えると、続編このペースでやっていくの・・・?という心配もあり。

DUNEのpartONEを観たときとちょっと近い感覚があるなと思ったり。
ギャグやアイヌ料理のくだりはもうちょっとテンポよくこなしたほうがよかったかも。


【6】映像
東宝公式のyoutubeでメイキング見る限り、ロケもスタントもかなり頑張ってる感じ。
邦画としてはけっこう予算かけてるほうだと思う。

全体にアクションシーンの映像は(クマ含め)
カット割りも、人間が吹っ飛ぶ絵も、スタントの動きもそこそこの高クオリティだった。

北海道の雪山の絵も広大でいい感じ。
ただ、雪山だけを引きで見ているとさすがに飽きてくる。

ラストシーン付近で、何もない雪山で2人をいろんな角度から映すところ、
尺をとって盛り上げたかったのかもしれないけど「そんなあちこちから撮っても四方八方全部似たような雪山だからwww」となってしまった。

小樽の街並みとかけっこう良かったので、もう少し雪山以外のロケーション多めでもよかったかも。


【7】音楽
BGM、ちょっと大音量で大げさにやりすぎな感じもしたけれど、
原作のスケール感を考えるとまあこれくらいはギリギリありなのかも。

【8】アイヌ要素
2時間の映画っていうところでは、料理シーンが多すぎて若干テンポを悪くしていた気もしたけれど、
アイヌの料理/文化をしっかり実写映像で紹介するっていう部分は、本作の存在意義ともいえる。

この規模の企画で、日本人の多くが知らないアイヌの文化/食生活を見せるのは、
映像作品としてとても素晴らしいところだと思うので、やっぱり削れないところだったのかもしれません。


【スコア】
★4.0で。
原作ファンなら4.5!とかつけるかもしれない良作。
漫画の実写映画化としては歴代でもかなり上位だなという印象。

初週の動員は5億ちょっとみたいですが、口コミは上々なので、続編できるくらいには売れてくれるんじゃないかなと。
エンドロールあたりで次から次に続編のキャラ出てきて、やる気満々すぎる終わらせ方嫌いじゃないです


<追記>
スターウォーズ好きとしては、
冒頭、設定を語るナレーションが聞こえてきた瞬間、開幕3秒で心の中のカイロレンが噴出して最高だった。
ツダケン最高
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