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私ときどきレッサーパンダのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
4.5

コロナ禍で劇場公開されず配信スルーだったピクサーの良作

2年越しで劇場上映されるということで、シネマイクスピアリで観てきました。

なんでこの作品が劇場で公開されなかったのか。
本当は大ヒットしてもっともっと評価されていたはずの作品だったのになあと思ってしまう。

話もキャラクターもカメラワークも編集も音楽も、あらゆる面でよく出来ていて、日本アニメへの影響やリスペクトもたくさん感じられる、本当によい作品です。

ディズニープラスで「レッサーパンダを抱きしめて」という48分と長尺のメイキング動画があるので、本作が気に入った人はぜひ観てほしいです。


<以下、ネタバレあり感想>








◾️メイメイ=ドミー・シー監督
2000年代初頭にトロントで少女期を過ごし、一人っ子の家庭で過保護な親に育てられたドミー・シー監督。
本作の主人公メイは、まさにドミーシー監督の少女時代そのもの。

まだまだ子供だけれど、色々なことに興味が芽生え、体型も変わり始める思春期。
パンダになってしまうメイの悩みは、監督の思春期の悩みをそのまま描写したもの。

やっぱり、監督の実体験をもとに創作された物語って、リアリティというか解像度というか、話の説得力が違うなあと思います。

ドミーシー監督は子供の頃からジブリや高橋留美子作品など、日本のアニメからの影響も強く受けている人で、
本作でも至る所に日本アニメのオマージュと思われるシーン/演出が散りばめられていてなんだか嬉しくなります。

4townのメンバーがライブで登場する時、カゴからストⅡの昇竜拳で出てくるの爆笑した。

いろいろ小ネタあるけども、
終盤ライブ会場に向かうメイパンダが屋根の上で細田監督の「時をかける少女」まんまのカットを見せる絵が個人的にはいちばん好きでした。


◾️解像度高すぎるオタク描写
メイメイたちのオタク描写の解像度/リアル感が異常に高いのも最高だった。
監督の実体験なのかな??

ベッド下で書き殴ったアレなイラスト作成シーンのテンション面白すぎるし、
それをアレされるエグさ、どんなホラーシーンよりも恐ろしい。母親ってそういうことするよね感のリアルさたるや。

アイドルに熱あげてる感じもリアル
ライブに向けてざわついてる感じとか、何かと口ずさんじゃう感じとか、
現実にはワイヤーで吊られて作り物の羽根つけてるアイドルが、リアルな羽の生えた天使にしか見えてないファン目線の感じとかツボ

ジャニ好きの人とかが見たらぞわぞわしそう


◾️カメラワークと編集が秀逸
劇場で観て改めて思ったのが、カメラワークや編集が本当にいいなという点。

キャラクターの感情に合わせてぐるぐる動くカメラワーク/ハンディビデオで撮った映像の上手い使い方/メイメイが羞恥心や怒りを覚えるシーンのギョロ目からの顔へ寄っていく写し方etc

キャラクターの感情と映像がシンクロする快感が素晴らしくて、面白いを通り越して感心すらしてしまう。


◾️話の振り/まとめ方が秀逸
K-POPアイドルに熱を上げている10代の少女の過保護な親とのややこしい関係

「パンダ化を解除するためには大人数で心を合わせて歌わないとダメ。歌はなんでもいい」という珍妙な設定が、この2つの話をつなげるクライマックス。

4townのメンバーが歌い始めた時の高揚感やばい。冷静に考えると意味不明な設定なんですが、
メイの親族らが唱えるお経のテンポと、4townのヒット曲のベース音のテンポが完全一致してシンクロし始めた時の気持ちよさ。

「そうかだからクライマックスはライブ会場なのかあああ」って全てがつながった感じの気持ちよさで脳汁出ました。


◾️キャラクター
各キャラクターのキャラ立ちや、こういう人いそう感/リアルさも素晴らしかったです。

メイメイの、こういう子いる!子供の頃いた!って思える普通の優等生感

ママの過保護な感じ

友人3人組のキャラ立ち
※眼鏡の子がいちばん好き

メイのおばあちゃん一族のキャラの強さ

いじめっ子も、4タウニーと判明したらもう仲間、で悪人は誰もいなかったみたいな世界観

すべてが優しくて好き。
リアルなようで、理想の虚構世界。

どこかの100周年記念映画にも見習ってほしいなとか思っちゃった。


◾️スコア
★4.5です!
良作揃いのピクサー映画の中でも個人的にはぁなり上位の傑作といいたい出来。

ドミーシー監督、日本アニメへの愛もたくさんな傑作を創ってくれてありがとう。
あなたはもっと評価されるべき
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