great兄やん

帰れない山のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
4.0
【一言で言うと】
「“固執”と“模索”」

[あらすじ]
都会で育った少年ピエトロは、山を愛する両親と山麓の小さな村で休暇を過ごす。そこで彼は、同い年で牛飼いのブルーノと出会う。繊細なピエトロと野性味にあふれたブルーノは対照的な性格だったが、一緒に大自然を駆け回りながら同じ時間を過ごすうちに固い友情を育んでいく。だが、思春期に入ったピエトロは、父親に反抗したことを機に家族や村から距離を置く。月日が流れ、父の訃報を受けたピエトロは村を訪れ、ブルーノと久々の再会を果たす...。

“親”という先人がもたらした壮大で残酷な“道標”。静謐で雄大な自然風景に息を呑むと共にブルーノとピエトロの確固たる友情物語にも引き込まれるとても素晴らしい映画だった。
147分という長尺なうえ終始淡々としたトーンで進むので流石に序盤は集中力が途切れそうになったが、ストーリーが進むにつれ徐々に静かな感動が込み上がってきましたし、なんと言っても彼らの“人生”を共に歩んだかのような得も言われぬ充足感に満たされていきましたね😌...

とにかくストーリーが想像以上に見事というか、ブルーノとピエトロの人物描写が恐ろしいほどリアル。まさかここまで自分の内に秘めた“悩み”に直接響いてくるとは思ってもいなかったです。
自分は一体何になりたいのか、どの“道”を進むべきなのか、そういった答えなき生き方が“自然”を触媒として両者それぞれの道を進んでいく展開にただただ目が離せなかったですし、特に青年期のピエトロの抱える悩みがまんま今の自分の境遇と同じでしたから(・・;)...

それに北イタリアのモンテローザ山麓を俯瞰で映し出したショットの数々も壮観かつ圧倒的でしたし、スタンダードサイズのアスペクト比がもたらす限定的な視覚効果も今作をより魅力的な作品として発揮していましたね😌...

特に氷河をひたすら歩くシーンはまさに圧巻そのもの。あそこまで圧巻だともはや綺麗通り越して恐怖すら感じましたね笑笑

とにかくブルーノとピエトロの瑞々しくも儚い友情に沁みつつも、時間という猛威は容赦なく降り積もるという残酷性を持った、まさに人生の濃密さを緩やかにもリアルに描いた一本でした。

途中”八つの山“の逸話が示すように、”須弥山“の如く一つの山に留まるブルーノとその周りの山々を彷徨うピエトロ。まさに人生をどう”極める“かによって見える景色も違ってくるものであり、その人生を決める”きっかけ“があればそれに反発したり突き進んだりするのも”自分“である。

”あの頃“は二度と帰ってこない。だからこそ前を向いて進んでいくしかない。

ある意味、人生って選択と決断の連続ですよね〜🤔...