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ファンタスティック・プラネットのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

3.5
いちど目にしたら忘れられないこの強烈なビジュアル、5年前にFilmarksを始めた頃からちょいちょいトレンドで見かけていたので地味にずっと気になってました。これだけ細く長く観続けられてるってことは余程の名作に違いない、というわけで73年作の切り絵アニメーションがデジタルシネマパッケージ化を機に全国公開されたこのタイミングでいざ劇場へ。

ストーリーが難解というよりは「何がどうしてその発想に至ったのか」という根源的な部分で混乱させられる造形や描写が至るところに散りばめられていて「自分は今、いったい何を見せられているんだろう」と不安に駆られる瞬間が幾度となく訪れます。話の展開そのものは割とスムーズに、絵本をめくるかのようなゆるやかさでもって進んでいくので「わけわからんけどわけわかる」みたいな状態がずっと続くのだけど、小ネタがいちいちブッ飛んでるせいで頭の中がとっ散らかって仕方ない。何なのだこれは。

こうして頭の中に浮かびまくるクエスチョンを更に増幅させるのが画と音です。どうしたってまずは青い肌と赤い目に気を取られてしまうこのビジュアル、73年製作ということで当然ながら手作業で描かれてるわけなんですけど、人体も植物も静物もひとたびアップになると描き込みがえげつないです。今のマンガならトーンを貼られているであろう箇所ぜんぶ、気が狂ったように細かいカケアミが施されてる。逆に遠景のモブはマッチ棒かよってくらいラフに処理されててほっとするんですけど、そこらへんのさじ加減がいかにも手仕事らしくて思わずじっと見入ってしまいました。劇伴はこのビジュアルにぴったりのサイケ感満載で、不安を煽ったりコミカルさを際立たせたりと実に雄弁に機能しています。あー、おもしろかった。上映前、映画泥棒の直前に流れるマナーCMが実写かつラバースーツ仕様のドラーグ族だったのにはびっくりしたし気合入ってんな〜とも思ったけど、いかんせんニップルが目立ちすぎてそこにしか目がいかなかったです。
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