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ノートルダムの鐘のtubameのレビュー・感想・評価

ノートルダムの鐘(1996年製作の映画)
4.2
地上波で放送されたのでかなり久々に観賞。も~とにかくアニメ映画として表現が洗練されてる。素晴らしい完成度の作品である、ということに尽きる。
物語の始まりから劇的なアングルと歌唱で荘厳な雰囲気を作り上げており、惹き付けられる。


醜い容姿を理由にノートルダム寺院に閉じ込められ鐘つきとして暮らすカジモドがジプシーの娘・エスメラルダと出会い自分を縛る鎖から解放されていく物語だが、差別や偏見の問題を多分に含みディズニーの作品としてはかなり大人向けだ。敵役のフロローが陰湿なタイプのヴィランで全般的にドロドロした雰囲気が漂っているのも印象的(それもまた良い)。
そんな中でも孤独なカジモドを励ます石像のキャラクターたちのシーンは楽しく作品の癒しポイントになっている。まず石像モチーフというのがユニークだし、あそこまで無機物を生き生きと描けるのはさすがディズニーと言ったところ。


結末が好きじゃない人もいるようだが、これはロマンスが主体の話ではなくカジモドが自分に向き合って乗り越えていく姿を描く物語だと思っているから個人的にはあの結末は納得だし、あれ以外あり得ない、くらいに思ってる。
カジモドは本来人を思い遣る優しさも勇敢さも持ち合わせていた(内面の美と言い換えてもよい)けど、フロローによって何も出来ない人間だと思い込まされていた。自分にも美点があること、これからの可能性にも溢れていることに気付き、誰かが助けてくれるんじゃなく自分が自分を救うって地に足のついた流れなのが最高。
逆にここまでヘビーな話をやってて突然現れた人が丸ごと自分を愛してくれて全てが救われたら軽すぎると思う。
恋人に憧れているらしいシーンもあったけど、カジモドが求めていたのは自分に正面から向き合ってくれて愛を持って接してくれる人の存在なのだから恋人である必要は全然なくて、友達ができて一歩世の中に踏み出したのがこれも現実的で良かったなと思う。


カジモドと同じように差別される存在だけど、対照的に自分を貫く気高く美しいエスメラルダも、癖のあるフロローも、勇敢で思い遣りある兵士・フィーバスも皆良いし、観賞後にはしみじみと登場人物や物語の背景に思いを巡らせてしまうような作品だった。まさしく大人のための童話だ。
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