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エゴイストのmQのレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
3.8
温度をたっぷり感じる瞬間と、そうでないとても冷たくて痛くすら感じるような瞬間とが混ざり合っている恋愛映画でした。

自然に恋愛映画だったと言い切れるのには、鈴木さんの徹底した役作りと阿川さんの自然すぎる母親像に一因がある気がします。
同性同士の恋愛映画をアジアではよく『BL作品』として扱うこともありますが、そのジャンルで観ようと思っている人には少し覚悟がいるかもです。

2人の出会いは突然で偶然で必然。そのスピード感や情熱たっぷりなシーンを見ると浩輔がどういう人物なのかはすぐ分かります。
一方の龍太は犬系に見せかけた猫系男子で、掴んだと思ったらするりと腕から抜けていって、とても明るい雰囲気を振り撒くのにどこか影がある。
年上の浩輔がそんな龍太にヤキモキしたりおせっかい焼いたりするシーンに見える温かさと痛さの間みたいなものは、たまに目を覆いたくなるほど。笑
でも好きだと距離感分からなくなるよなぁ〜同性がとか関係なく。

ただこの映画の後半感じるのは想像を絶する現実で、ずっと苦しいです。ああ駄目だ、苦しい、難しい。

同性との恋愛に関係ないとは言えない変な後ろめたさとぼんやりした偏見の目と…どの国にいても変わらない不安定な空気はどうしてこうも痛いのか。

映画なのだからと、もっとファンタジーを夢見たりもしたけれど隅々まで現実。初見はなんて救いのない…って勝手に絶望してましたが、深く深く考えて考え込んでを繰り返しました。

結論なんて出ませんが、浩輔の視点から感じた世界の変化を見ていて、愛する人を介しての〝無償の愛”ってやつは存在するのかもと思わされた。この世にそんなものはないと思っていたけど。
究極のエゴイストが求めたのは、幼少期に失くしたものだったってのが震える。

年齢も性別も超越してそれを互いに渡し合える相手に会ってみたい。
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