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ボーはおそれているのmQのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「ボーは可哀想。」
観終わってすぐの感想です。

彼のいう〝おそれ”を理解できるのは、同じものを抱いたことがある人に限るでしょう。だからこそ巷では『ミッドサマー』の方がマシ、なんて言われていたりするのかな。
ホアキンのヲタクは観ましょう。文句なしの徹底ぶり。

自分の意思に関係なく長い時間何かを強いられ自分に蓋をし、ついには自分が何者か分からなくなってしまう
そんな経験がある人には結構クる。私もその1人だったりしたので焦った。

冒頭から過激且つ刺激的で彼の住む場所自体が恐るべき処って感じですが、母親に会うために実家を目指す中で身を置く場所も静かであったり文化的な取り組みをしている人たちの集まりであったりするのに、どこかいつも恐ろしい。

それはボーのせん妄なのか現実なのか幻視なのか判別がつかず、戸惑い怯え目からは涙が溢れるばかり。
「僕のせいじゃない」という思いと、自分で何かを決定したくないという思いで生きてきた彼はまるで世界の言いなりです。

しかし一つ言えるのは、彼の感覚を鈍らせているものは常に誰かから与えられている。食べ物、飲み物、感情、視線…形状は問いません。

原因は母親かと思っていたけれど…この辺がなんとも難しかった。
最後の最後までどこかで母親のことを全て分かっていて、欺いていて、愛しているのに死んでほしい。カウンセラーの言葉が沁みます。
そして懐かしくすらあった。私もそんな時代があった気がする。良い子ではいられない。

『ミッドサマー』は鑑賞中ずっと酩酊状態が続く感覚のある映画でしたが、今作はかなりくっきりハッキリした意識でずっと観ていました。
ホアキンの大きな瞳から得られる全ての感情を取り溢さないよう。

終に行き着いた大きな水たまりは、母親の重苦しい愛情のようで…とうとう底深くへ沈んでいってしまったボーの姿にしっとり泣けてきました。
様々なメタファーを回収した先にあるこのラストとエンドロール、、渋い。
早くもアリ・アスター監督の次回作が待ち遠しいです。
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