あるシークエンスの途中からいきなり唐突に始まった物語において、詐欺師の鮫島優（玉城裕規）とその舎弟・押切淳平（相馬理）は、亡き夫の資産で暮らす老婦ハルエ（金子早苗）を騙して遺産を乗っ取ろうと画策する。実は彼女は認知症を発症しており、お茶と間違えてビールを出す有り様だった。その日は亡き夫の金歯だけを回収し、あらためて別日に遺産を奪おうと虎視眈々と計画を立てる。ところが、約束の日にハルエを訪れるとハルエの通夜が行われていた。ババアの遺産をせしめようと田舎の一軒家に押し入った2人組のチンピラが突如、遺産相続の渦中に置かれる辺りがユニークで面白い。目論見が外れ、Uターンして帰ろうと思うがその日は土砂崩れがあり、東京には帰れない。孤立したチンピラ2人組はハルエの孫・二階堂早妃（永瀬未留）や弁護士・辻和成（伊藤慶徳）と居るしかなくなる。

　いかにも演劇タイプの物語だと思ったら、原作は劇団オレガユナイテッドによる2013年の舞台『Not beer but low-molt beer』だという。原案は12年前の物語ながら、まったく古さを感じさせない。舞台は通夜が行われるハルエの家というワンシチュエーションのみだが、二転三転する脚本は真にドラマチックで目が離せない。シネマート新宿の2回目の舞台挨拶の回に伺ったのだが、明らかにいつもと違う客席の雰囲気と客層を感じ取った。失礼ながらキャスト陣は誰一人として存じ上げなかったが、何となくメイン・キャストの玉城裕規さんと相馬理さんは2.5次元俳優や戦隊ヒーロー俳優だと思うのだが（違っていたらゴメンなさい）、芝居が意外なほどしっかりしていて驚いた。撮影は3年前で、当初は映画館で封切られること自体が難儀したとのことだが、日本でインディペンデントに映画を撮ることの困難が各人の口から語られ共感しかない。『Not beer but low-molt beer』改め『NOT BEER』というタイトルそのものは今一つしっくり来なかったが映画そのものには確かに初期衝動が刻まれていた。

田辺弁慶映画祭にて鑑賞。
会場に行ったのは多分三年ぶりか。

金(きん)の買い取りを取り付けた詐欺師二人組が、取引相手の老婆のもとを訪れると、その老婆の通夜が行われていて、
「通夜の日に最後まで残った人に相続させる」と言う遺言に、その詐欺師も巻き込まれ、その場に居合わせた弁護士、孫、そして詐欺師たち四人による騙し合いが始まる、と言うのが簡単なあらすじ。

鑑賞後のスタッフ登壇で、監督から舞台原作であったらしいことが語られた。
それが分かりやすく、話はほぼ一軒家の中だけで展開される。
嘘を用いて人を騙す詐欺師はもちろんのこと、弁護士と孫にも「騙す」要素が内在していて、それでいて「悪党」はいるのだけど「悪」はいない、そんな作りに優しさを感じる。
話は捻っているけど、気持ちを穿たなくても気楽に観れる、そして気持ちよく騙されることができる作品でした。

普通に面白かった。
キャッチに「全員嘘つき!!!!」と、ほぼネタバレしてるので、凝った嘘とドンデン返しを期待してましたが、期待外れでした。コメディ要素も少なめで残念です😰