たにたに

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのたにたにのレビュー・感想・評価

3.8
【#MeToo】2023年10本目

映画プロデューサーとして数々の名作を世に生み出してきたハーヴェイ・ワインスタイン。

ニューヨークタイムズの記者である2人の女性は、根気強く情報を収集し、そして時には圧力と闘いながらワインスタインのスキャンダルを報道すべく奔走する。

#MeToo運動の発端となった彼女達の行動と、性被害を受けてきた多くの女優達の勇気ある発言によって、女性の強さを感じられると同時に、未だ権力や忖度によって守られない女性達がいるという社会の不条理さを思い知らされる。

実際に聞いたことのある著名な女優さんの名前もたくさん出てきて、ドキュメンタリータッチで描かれる。

ニューヨークタイムズの2人の女性記者の行動力と信頼を得るために奔走する姿に、ジャーナリズム精神を超えた、当たり前のことを当たり前と主張できる世界に変えたいと言う強い意志を感じる。

芸能界の"干される"という謎風潮。
人は道具ではない。使いづらいとかいう基準すら、そもそもおかしいのである。
そして権力を利用して欲を満たす行動は、人間の歴史から見て、いかに愚かなことかと分かるはずである。

もちろん行き過ぎたジャーナリズム精神もまた、これに加担していることに目を伏せてはならない。受け取る私たちも、面白がって物事の本質を履き違えて理解してはならない。

しかし、ニューヨークタイムズの記者らは事実確認を怠らず、そして責任の重みを感じながら妥協なき記事を世に送り出した。
批判は時には大きな影響を生み出す。
彼女たちの行動は特定の人物に対する批判ではなく、抑圧や風潮に対する批判なのである。

大きなムーブメントの中に我々は何を思うか。他人事ではなく、寄り添うことに大きな意味を持つ。
たにたに

たにたに