たにたに

夜明けのすべてのたにたにのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
✨2024年18本目✨

雨の中、傘も差さずベンチで横たわる若い女性がいる。警察のお世話になって、母親の迎えが来るまで反省の面持ちで佇んで。
薬の効果が強すぎて急に眠くなってしまう彼女は、PMSを患っているのだ。
居た堪れなく転職した彼女は、プラネタリウムのキッドを製作する工場に勤めることに。
そこにいる職場の方々は皆優しくて、精神的な病を抱えた従業員を積極的に雇っている社風にも見える。

職場には、若い男性が一人。彼の空気の読めなさに、彼女は感情の起伏を抑えれず急に大声出してしまう。仕事中に炭酸ばっか飲まないで。音が気になるんだけど!と。また興奮してしまった。彼女はすぐに、反省で頭が一杯になる。お菓子を買ってみんなに配って謝りまくる。

その男性は前職に戻るための繋ぎとして働いており、どこかやる気もなく。炭酸水で薬を飲む。彼もまたパニック症状を患っている。
ある日突然、電車に乗れなくなってしまった。過呼吸で立ってられない。薬を飲んでないと不安になる。

この2人の男女の出会いは、互いの病気について理解することから始まり、自分自身を見つめ直すきっかけになる。

自分の苦しみを理解してくれる人はそうもいない。というよりも、理解したつもりになられて同情を買われるのもムカつく。
それでいうと、この工場の人たちは、同情ではなく温かい声掛けをたやさないし、否定などはしない。なんて素敵な職場だろうとこちらまで涙腺が緩む。

初めは歪みあってた2人も、会社で行われるプラネタリウム上映会のために共同作業を始めて仲良くなっていく。
何かに集中してる方が彼女はどこか落ち着きを保つのかも、と、車の清掃をお願いしたりして。

彼らはその病気を受け入れているように思う。別に隠して生きているわけではない。
よくある恋愛物語ではない。複雑な2人が織りなす男女の関係は、見ていて非常に微笑ましいのだ。
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