ゼロ

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのゼロのレビュー・感想・評価

4.2
また、月曜日がやってくる。

ワンシチュエーションのタイムループの傑作。この作品は、日本にしか作ることができず、全てのサラリーマンが共感できる痛快なコメディ作品。正直、表題から泣けて、胸が熱くなる作品だとは思いませんでした。

ストーリーは、クライアントから無茶振りされまくりの過酷な労働環境の広告代理店で働く吉川(円井わんさん)。社員が寝泊まりしているのは当たり前で、部長が朝から出勤し、虚無な日々を過ごす。吉川は次の転職先のために、今は頑張ろうと自分を鼓舞するが、プライベートの恋人とは会うことができず、疎遠になりつつある。そんな状況の中、月曜日の朝に後輩の遠藤と村田から「僕たち、同じ一週間を繰り返しています」と告げられる。しかし、吉川はそんな戯言を無視して、仕事に取り掛かるのだった…というもの。

上司である永久をマキタスポーツさんが見事に演じ切っていました。あの役職ついているけど仕事できなさそうなポンコツな雰囲気が、とても良かったです(笑)フィクションなので、実は抑えるところは抑えている…という点が描かれるのですが、現実の上司は裏でも無能なので、残酷ですよね…。

舞台となるZコミュニケーションのメンツは、日本の会社員の縮図を見事に表現していたな…と。主人公の吉川は、野心を持って仕事に取り組んでいるが、周りの同僚が同じ志を持っているといえば違います。途中でタイムループであることに気付き、上司が原因と思われるのなら、直接言いにくも、あしらわれる。若者の意見は聞かないというのが日本っぽいし、上司を説得するために役職者の協力が必要であるってのも日本っぽいし、言葉で言っても理解できないからプレゼン資料を作成するのも日本っぽいです。

割ととんとん拍子で当初の目的は解決するのですが、実はそれではタイムループから抜け出すことはできない。解決策は、上司の心残りを浄化させること。ここから物語が個人主義から全体主義へと変わっていき、感動の結末へと迎えることになります。

上映時間が82分と短いながらかも、会社員のあるあるネタを入れながら、人生という大きな尺で「仕事って何だろう?」や「夢ってなんだっけか?」というのは考えさせられる。結末も、「成し遂げたとしても人生は大きく変わらない」ってところも含めて、良かった。

低予算映画ながらも、会社員には響く傑作でした。
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