むぅ

クロニクル・オブ・レイシズム アメリカの真実のむぅのレビュー・感想・評価

3.8
「でもきっと都市伝説はうちら」

久しぶりにいつもの4人で飲む。すでに合流した1人がウキウキと言う。
「飲み会久しぶりだぁ、でも最近あんまり飲めなくて」
「とか言って、2〜3杯で終わるって事はないでしょ?」
「まぁね」
「時に、巷には飲み会と称して2杯くらいしか飲まない人もいるとか。都市伝説かと思うわ」
「間違いない」
「でもきっと都市伝説はうちら」
「間違いない」

これを偏見というのでは。
この程度なら、呑んだくれ達の"戯言"であると思いたい。
けれども"戯言"を、微笑みながら"ざれごと"と読んでくれる人もいたら、鼻を鳴らしながら"たわごと"と読む人もいるだろう。
ただ、上のアホな決めつけの会話の単語が人種、民族、ジェンダー、宗教、障がい等を指す言葉に入れ替わったとしたら、もうそれはヘイトスピーチなのでは。


公民権運動に関わる刑事訴訟に長く携わってきた弁護士ジェフリー・ロビンソンが、黒人差別による犠牲者の家族、衝撃的な事件の目撃者、運動家などへインタビューし、奴隷制度時代から続けられてきた人種差別の実態と差別と戦う人々に迫るドキュメンタリー。


大人になって思うのは、私は見たいものだけを見ようとする生き物なのだなぁということ。
先週「厳しいことを言います」とこちらを見上げてきた体重計から目をそらした。
今週「ここにいるよぉ!」と主張している氷結無糖の空缶たちをゴミ袋に連行し存在を消した。
見たいものだけを見て、見たくないものを見ず、何なら(体重計調子悪いかも)とか(先週缶のゴミ捨て忘れてるかも)とか、都合のいい情報や想像で補完する始末。
自己完結出来るなら、被害があるのは私の健康や財政の範囲内で終わるが、他者が関わってくるとそうはいかない。
用心しないと、この思考回路って差別の構造に繋がるのではないかな、と思った。

大人になるという事の一つに、他者を知り、人との違いを理解することが含まれると思っている。
そして様々な情報の中から事実を抽出し自分で考えること。

史実によって紐解かれていく差別の構造は、黒人差別だけではなく様々な差別に共通していた。
私には学びの多い作品だった。
他の方はどんな感想を持ったのだろうとFilmarksを開いて驚いた。
まさか誰もレビューしてないとは。書かないつもりだったけど、こんな作品があることをお知らせするために書くか、となった。
そこに(わーい1番乗り)と思った事実があることも認めつつ。


「あの店、鬼門かも。前回行った時もだけど今回も帰ってきて彼氏と喧嘩になった」
結局5杯?6杯?ま、どっちでもいっかと思いながら寝る準備をしていたら友人からLINEがきた。
"事実"を伝えることは大切。
「お店のせいじゃなくて、酔っ払って遅くに帰ったからでは?あのお店は美味しいしお酒が濃いだけ」
クマが逃亡するスタンプが送られてきた。
わかる、事実って逃げ出したくなることあるよね。
でもちょっとだけ。君の彼氏、わりと束縛するよね?これは私の偏見なのだろうかと思いながら寝た。
むぅ

むぅ