ハリウッドを代表するスタンドアクション・コーディネートチーム87eleven Action Designが立ち上げた映画製作会社、87North Productionsによる最新作。
同プロダクションは2021年に『Mr.ノーバディ』という快作を公開しており、ノリに乗っての新作ということである。
そういえば日本のポスターのアートワークもほとんど同じ。変に色気出して格好つけずにドンと主役の顔面だけで構えるそのストロングスタイルは嫌いじゃない。
『Mr.ノーバディ』よりも遥かに偏差値を下げた超トンデモバカ映画に仕上がっている。
そもそも設定からしてB級映画を地で行く低脳感っぷりにクラクラするが、その脚本のアホらしさをアクセル全開で踏み抜くサンタクロース(デヴィッド・ハーバー)の怪演が素晴らしく、奇跡的に呆れることなくその狂乱に相乗りすることができるのだ。
巷で謂れる通り今作は『ダイ・ハード』的でもあり『ホームアローン』的でもある。
そうした過去の名作への無邪気なオマージュ精神に溢れる一方で、この映画にはそうした名作に対するプレッシャーも一切感じさせないのである。
あまりにキッチュで不遜なその態度には、オスカーなどの権威主義だったり、「名画●選」などのガイドブックなどにおけるポジショニングなど歯牙にかけない潔さが漲っており、いっときのエンタメとして消費されゆく使命を痛快なほどに全うしているのだ。
87らしい肉体疲労と痛みを伴うアクションシーンは健在だし(今回のサンタクロースは特にヤラレっぷりが痛快!)、クリスマスという多幸感のある舞台装置を悪趣味な形で転用させたユニークな戦闘描写も楽しい。
ただ全体的に派手なシーンの大半が暗闇の中行われるのでせっかくのアイディアの迫力がかなり損なわれてしまっているのが非常に残念だった。
間違いなくキャラクタードリブンな映画なのでその奇抜なアイデアだけで丸々ストーリーを走らせたことは明白であり、逆に言えばプロットはあまりにも杜撰で壊滅的である。
その意味ではまだ筋書きに一定の整合性が取れていた『Mr.ノーバディ』よりも映画としての精度は劣ると言わざるを得ない。
が、そんなことお構い無しにサンタクロースの殺戮を眺めて笑えるだけの楽しさは詰まってるのであとは好みの問題です。