踊る猫

あの頃輝いていたけれどの踊る猫のレビュー・感想・評価

あの頃輝いていたけれど(2022年製作の映画)
3.4
ハートウォーミングな佳作だな、と思う。自閉症を扱った映画は古今東西様々なものがあるが、この映画の掘り下げ方はどこか甘い。天才的な才能を持つ存在である、ということが押し出されているのだけれど悪く言えば「それだけ」という印象をも感じる。もっと騒音が苦手だとか慣れないシチュエーションに苦しむとか、そういう要素を盛り込んでもよかったのではないかと思った。これでは肝腎の物語の根幹を成すその自閉症の要素が「ただのおかしな人」の一因に感じられてならない。また、音楽によってケミストリーを生み出すところは上手く描けていると思うのだけれどそこから先に上手く物語が転がっているとも思えない。ケチをつけようと思えばキリがないが、しかし私はもっと建設的に(?)この映画を観たい。この映画から感じられるのは、あくまで平熱を保ったままで高い目標を見上げるその「背筋の伸びた野心(!?)」とでも呼ぶべきものだ。その背筋の伸び方において、この映画を私は嫌いになれない。
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